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相手の行動の原因が明確でない時、分からない時に、どこに原因を求めるか(帰属させるか) ▼自己知覚理論 他人の行動について判断する時と同様の推理過程を、自身の行動について判断する時にも用いる。 自己知覚が、他者知覚と同様のプロセスを持っている。 ▼認知的不協和 心の中に矛盾する2つの認知があって不快に感じた時、 一方の認知を変えて2つの認知の矛盾を小さくしようとする。 ▼内的帰属と外的帰属 ・内的帰属:その人が持っている性格や行動特性などを原因とみなす。属性帰属。 ・外的帰属:その時の状況を原因とみなす。状況帰属。 ※行為者ー観察者バイアス:行為者は外的帰属に、観察者は内的帰属にしやすい ▼原因帰属のパターンとうつ 抑うつ的になりやすい帰属パターン 内的要因(自分の能力や努力) 外的要因(運や周囲の状況) 安定的要因(自分の能力) 変動的要因(努力) 統制可能要因(努力や周囲の状況) 統制不能要因(自分の能力や運) ↓ 失敗の原因を帰属しやすい ↓ 成功の原因を帰属しやすい
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妹の病んだ原因 第一話前編 妹の病んだ原因 第一話後編 妹の病んだ原因 第二話 妹の病んだ原因 第三話 妹が病んだ原因 第四話 妹が病んだ原因 第五話 妹が病んだ原因 第六話
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「告白」 女「私と付き合ってくださいっ!」 男「ごめん、俺今付き合うとか考えられないから。」 女「…やっぱりお姉さんのことがあるからですか?」 男「姉ちゃんは関係ねーよ。」 女「嘘ですっ!」 男「…関係ないだろ。」 女「男くんはお姉さんに縛られすぎだと思います。このままお姉さんの面倒を見 て一生を過ごすんですか?」 男「…家族なんだから、当たり前だろ。」 女「家族だからです。そうやって男くんの一生を台なしにするのをお姉さんが望 んでると思うんですかっ!?」 男「お前に何がわかるんだよ!? 女「あ、男くん…!」 … 男「ただいまー」 シーン 男「…?姉ちゃん?」 姉「くぅ、くぅ。」 男「待ちくたびれて寝ちゃったか。」 男「…姉ちゃん、このままで俺は幸せだよ。」 「告白ー女の一番長い日ー」 最低な告白をして以来、私と男くんは気まずい関係が続いた。 女「はぁ、今日も男くんに謝れなかった。」 男くんに障害があるお姉さんがいることは噂で聞いていた。 付き合いのいい方でない男くんは、クラスで少し浮いた存在で、そんな彼を悪し 様に言うクラスメイトが少なからず居たからだ。 でも、私は男くんがやさしいことを知っていた。 中学の頃、あまり体が丈夫でなかった私は、通学途中に急な腹痛に襲われて通学路 で座り込んでしまったことがあった。 男「大丈夫?」 心配するような声に顔をあげると、違う中学の男子が私を覗き込んでいる。 女「大丈夫です。いつものことですから。」 男「でも、辛そうだよ。救急車呼ぼうか?」 女「いえ、そんな大事じゃないですから。」 急に体調が悪くなるのは今日が初めてじゃなかったし、これ以上引き留めるのも 悪い気がした。 女「あの、私はもう大丈夫…」 男「じゃあ、立てるようになるまで話しでもしてよっか?」 女「え?でも、あなたも学校に遅れちゃいますよ。」 男「いいよ。それに、体調が悪い時に一人だと無償に不安になるでしょ?」 …それから何を話したのかはあまり覚えてない。 ただうれしそうに、お姉さんの話をするのが印象的だった。 高校にあがり、彼を同じクラスで見つけた時、びっくりして心臓が止まりそうに なった。 彼はあの時のことは覚えていないみたいだったけど、あの時の彼のままだった。 気付いたら私は彼を好きになっていた。 …でも 女「なんでこんなことになっちゃったんだろ?」 自分がしでかしてしまったことに落ち込みながら、通学路の公園を通る。 女「あれ?」 気付くと一匹の子猫が私の足に纏わり付いていた。 女「わぁっ、かわいいっ」 思わず抱き上げる。野良猫だろうか? 女「首輪がついてる?」 姉「みーをかえして。」 急に声をかけられ、驚く。 顔をあげると、スケッチブックを持った女性が、私を睨み付けている。 女「あなたの猫なんですか?」 姉「そうだよ、かえして。」 泣きそうな顔で見つめられ、怯む。 女「ごめんなさい、取るつもりじゃなかったんです。」 姉「ほんと?」 女「ええ、ただかわいくて。」 姉「そうだよね、みーはかわいいよねっ!」 彼女が急に笑顔になる。 姉「あのね、ミルクをのんでるときとかもっとかわいいんだよっ!」 スケッチブッグを広げ、私に見せる。 そこには驚くほど写実的にミルクを飲む子猫が描かれている。 女「すごい上手ですね!」 姉「えへへー」 彼女がうれしそうに目を細めた。 女「いつもここで絵を描いてるんですか?」 姉「ううん、いつもはおうちでかいてるの。おとうとくんとか。」 女「…弟くん?」 姉「うんっ!みる?」 彼女はうれしそうに顔でスケッチブックを差し出した。 震える手でページをめくる。 彼女に会った時から、どこかでそんな予感はしていた。 …スケッチブックの中には優しげに微笑む男くんがいた。 姉「じょーず?」 女「…ええ、とっても上手ですね。」 なんとかそう答える。彼は学校では見せない顔をしていたから、なんだか胸が苦しかった。 姉「えへへ」 褒められてうれしいのか、彼女はひまわりみたいな顔で微笑む。 姉「じゃあ、おうちにいこっ!」 女「え?」 姉「おうちにはもっとたくさんあるんだよ。みせてあげるっ!」 女「ちょっ、ちょっと!」 彼女は私の手を握ると、嬉しそうに駆け出した。 …私はなにやってるんだろ? 振られた男の子の家で、彼のお姉さんと絵を見ている。 それは不思議な状況であったが、彼女の笑顔を見てるとどうでもよいことに思えてくる。 …それに 姉「それでねー、これがねてるおとうとくんで、こっちがおべんきょうしてるおとうとくんっ!」 …絵の中の男くんはみんな、とてもやさしい顔をしていた。 姉「…どうしたの?」 女「え?あ…この人、とても優しい顔してますね」 思わずそう答える。 彼女の笑顔がさらに深くなった。 姉「うんっ!おとうとくんはとてもやさしいよっ!」 女「そうですか」 姉「そうだよ、とってもいいこなの。わたしのたいせつなおとうと。」 そういって、スケッチブックを抱きしめる。 その顔は絵の中の彼の顔と同じ、とても優しい顔だった。 …彼の優しさの理由がわかった気がした。 そして、私が彼に言ってしまった言葉の重大さも。 女「…ごめんなさい。」 頬に涙が伝う。 姉「どうしたの?」 女「ごめんなさい…ごめんなさい…」 涙が止まらない。 姉「どこかいたいの?いいこだからなかないで。」 彼女が優しく頭を撫でてくれる。その手が温かくて、さらに私は泣き続けた。 姉「よしよし、いたいのいたいのとんでけーっ」 私が泣き止むまで、お姉さんはずっとそばにいてくれた。 姉「だいじょーぶ?」 女「ええ、もう大丈夫です。」 姉「よかったぁ。はい、これ」 女「キャラメル?」 姉「うん、あげるっ!」 女「いいんですか?」 姉「だっておんなちゃんはおともだちだもんっ!」 女「…ありがとうございます。」 なんだかまた泣きそうになる。 口の中にキャラメルを放り込み、涙をごまかした。 女「甘い…」 姉「でしょー?」 彼女がほがらかに笑う。私も気付くと笑みを浮かべていた。 それから一時間ぐらい二人で遊んだ。 こんなに無邪気に遊んだのはいつぐらいだろう? 遊んでいる間は二人とも、笑顔だった。 気付くともう遅い時間だった。 女「そろそろ帰らないと。」 姉「えー。」 女「ごめんなさい、でも。」 渋る彼女をなだめていると、ドアが開く音がした。 男「ただいまー、あれ?」 …心臓が止まった気がした。 男「女、なんでここにいるの?」 女「え…あの…」 彼の顔をまともに見れない。 姉「いっしょにあそんだの。」 男「女と?」 彼が怪訝な顔を浮かべる。耐え切れなくなって私は彼の家を飛び出した。 女「じゃ、じゃあ。さよならっ!」 一気に駆け出す。頭の中が真っ白で何も考えられなかった。 気付くと公園まで来ていた。 疲れて、ベンチに座り込む。 …やっぱり、私が彼の居場所にいていいはずかない。彼を傷つけた私が。 また泣きそうになる。 今度は辛い涙だった。 男「おーい。」 彼の声が聞こえた気がした。 男「聞こえないのか、おーい。」 女「ふぇっ、男くんっ!?」 男「これ、忘れ物。」 鞄が差し出される。けれどまともに彼の顔が見れなかった。 女「…ありがとうございます。」 男「あと姉ちゃんから伝言。また来いってさ。」 女「え?」 男「だから、また遊びに来てくれって。だめかな?」 女「え、でも私は…」 男「俺からも頼むよ。」 女「…でもいいんですか?」 男「あの時のことなら気にしてないし。…それに姉ちゃんすごくうれしそうだったし。」 そう言って彼は微笑む。お姉さんと同じ優しい笑顔で。 女「…はい、喜んで。」 気付くと私は力いっぱい頷いていた。 いつのまにか涙はどこかに消えていた。 |・・・ 男「ただいまー」 玄関に見慣れたローファーをある。 男「また来てんなぁ。」 居間から楽しげな声がしたので目を向けると、姉と女が絵を描いて遊んでいた。 姉「あはは、へたっぴだぁ。」 女「そんなことないですよー」 姉「あ、おとうとくん。おかえりー」 女「お邪魔してます。」 男「何描いてんだ?」 姉「おんなちゃんのだいじなひとなんだってっ」 女「お、お姉さんっ!」 男「へぇ。で、これ誰なんだ?」 女「…わかりませんか?」 男「うん。ってか、これ人か?」 女「あ、ひどいですー」 姉「あのねー」 女「だ、だめですっ!」 姉「う?なんで?」 女「こ、これは二人だけの秘密だからですっ!」 姉「ひみつ?わかったぁっ!」 男「なんだよ、俺だけのけ者かよー」 女「ええ、女の子どうしの秘密ですから。ねー」 姉「ねー」 いたずらをした子供みたいに微笑む二人は本当の姉妹みたいに仲良く見えた。 それがなんだかうれしくて、俺の顔にも自然と笑みが浮かぶのであった。 「旅行と二人の姉」 女「本当に私がついてきちゃってよかったんですか?」 男「気にしなくていいよ。無駄にするのもったいないし。」 俺達はとある温泉に一泊二日の旅行に来ていた。 女「でも姉まで連れてっていただけるなんて…」 男「だから家族四人ご招待だったからいいんだって。それに女ひとりじゃ親御さんも心配だろうし。保護者がいてくれた方が俺達もいいしね。」 女「はぁ、ちゃんと保護者してくれるといいんですけど…」 女姉「何してんの二人ともーっ!そんな所でいちゃついてないでさっさと宿に入るわよっ!」 姉「おとうとくん。はやく、はやくっ!」 女姉「久しぶりの旅行だぁっ!全力で楽しむぞーっ、ひゃっほぉー!!」 姉「ひゃっほぉー!!」 女「…保護者に見えますか?」 男「あ、あはははは…」 どうしてこんなことになったのかというと… カランカランカラーン! 店員「特賞!大当りーっ!!」 店員がけたたましく鐘を鳴らしている。 その音にびっくりしたのか姉は涙目だ。 姉「おとうとくーん…」 男「大丈夫だよ、姉ちゃん。それで特賞ってなんですか?」 俺達は近くの大型スーパーで行われている福引きに来ていた。 俺は四等の洗剤セットを狙っていたのだが、出てきたのは金色の玉だった。 店員「特賞はこちら、豪華温泉旅館ご家族四名様ご招待でございますっ!」 店員がやたら高いテンションで賞品を手渡す。 姉「おとうとくん、おんせんってなぁに?」 男「ああ、行ったことないもんな。俺もだけど。温泉ってのは大きなお風呂だよ。」 姉「どれくらいおおきいの?」 男「うーん、わかんないけど池ぐらいか?」 姉「おいけ?すごーいっ!!」 姉の目が輝いた。琵琶湖くらいの大きさを想像してる気がした。 男「ご家族四人ご招待か…」 ふと脳裏に死んだ母がよぎった。 打ち消すように姉の手をぎゅっと握る。 姉「おとうとくん?」 女「おれ、男くんとお姉さんじゃないですか?」 姉「あ、女ちゃんだー!」 女と知らない女性が手を振りながらこちらへ来る。 俺は急いで暗い顔を消し、笑顔をつくった。 男「奇遇だな、そちらの人は?」 女「あ、私の姉です。」 女姉「君が噂の男くんかー、ふむふむ。」 女「ね、姉さん!あんまりじろじろ見たら失礼だよ。」 女姉「いーじゃない、減るもんじゃなしぃ。むしろ増えるわよ。」 女「何がっ!?」 女姉「こっちがお姉さんね。本当に綺麗な顔ー」 姉「ふゅ?なにするのー?」 姉の頬をぐにゅぐにゅといじる。 姉はぽかんとして、させるままにしていた。 女「姉さんっ!何やってるの!?」 女姉「ふぅー、堪能ー。ありがとね、お礼に飴あげるわ。」 姉「わーいっ!」 姉は嬉しそうな顔をしてイチゴキャンディーを頬張った。 女「すいません、ご迷惑をかけて…」 男「いいよ、姉も懐いてるみたいだし。」 見ると姉達は無邪気にキャッキャッと遊んでいた。 男「でも、女ってお姉さんいたんだな。」 女「実は私兄弟多いんですよ。あと下に弟と妹がいます。」 男「楽しそうでいいな。」 女「そのかわりいつも大騒ぎですけどね。ところでそれなんですか?」 男「ああ、さっき福引きで当たったんだけど一泊二日の温泉旅行らしいんだ。」 女「すごいですねー。」 男「でもこれ、ご家族四人招待なんだよなぁ。うちで行けるの俺と姉ちゃんだけだし…」 女姉「じゃ、あんた一緒に行きなさいよ。」 女「きゃっ!何、突然。」 女姉「だからー、あんたが一緒に行けばいいじゃない。男くんもいいわよね?」 男「え?あ、まぁ女がいいなら…」 女「えぇーっ!そんな何言ってるのよ!?男くんと旅行だなんて…男くんに迷惑だよっ!」 女姉「いいって言ってるじゃない。それに人数余って困ってるじゃない。」 女「でもでもー、高校生同士で旅行だなんて…お姉さんもいるけど保護者にはならないと思うし…」 女姉「そこで私の出番よ。」 女「え?」 女姉「私も行くわ、温泉。」 そう言って彼女さニヤリと笑う。 俺の姉はまだ嬉しそうにイチゴキャンディーを舌で転がしていた。 温泉からあがり、姉の髪を乾かした俺は彼女の髪に櫛を通していた。 姉は気持ち良さそうに目を細めている。 男「姉ちゃん、楽しい?」 姉「うん、とってもたのしいよっ!」 姉はひまわりのような笑顔を浮かべる。 長年、弟をしている俺は彼女が心の底から楽しんでいることがわかった。 姉「でもね、おふろおいけよりちいさかったよ?でもおおきかったのっ!」 男「そっか、でも気持ち良かったろ?」 姉「きもちよかったし、たのしかったー!あのね、女姉ちゃんってすごいんだよっ!」 本当に楽しかったのだろう。 姉はすごい勢いで風呂でのことを話す。 きっと本当楽しかったのであろう。 連れて来てよかった… 俺は女と彼女の姉に感謝した。 姉が寝付いた頃、俺は一人で散歩に出掛けた。 外は肌寒いが、食事の時少しだけ酒を飲んでいたのでほてった体にはちょうどよかった。 旅館の中庭に向かうと女の姉が一人佇んでいる。 女姉「お姉さん、もう寝た?」 男「女と仲良く眠ってますよ。」 女姉「ふふふっ、まだ子供ねー」 男「酒なんか呑ませるからですよ」 女姉「ちょっと呑んだくらいで酔っ払うから子供なのよ。」 男「女に無理矢理飲ませてたじゃないですか?それに姉ちゃんに悪いこと教えないでくださいよ?」 女姉「はいはい、過保護だねー。でもやっぱり君はお姉さん想いだな。」 男「だって家族ですから。」 女姉「そう素直に言えるのは凄いことだよ。でも、君は頑張りすぎじゃないかな?」 男「え?」 女姉「君はいつもお姉さんのことだけ考えてる。お姉さんを守ろうと、悲しませまいと必死に頑張ってるよね。」 男「…いけないんですか?」 女姉「いけなくはないさ、素晴らしいことだと思う。でも、ずっと気をはる必要はないんじゃないかな?」 男「そんなことないですよ。」 女姉「ううん、君は自分のことより絶対的にお姉さんを優先してる。自分の全てを犠牲にしてもお姉さんを幸せにしたいと思ってるよ。」 男「それは…」 女姉「でもさ、それで、それだけでお姉さんは幸せかな?」 男「…どういう意味ですか?」 女姉「君も幸せにならないとお姉さんも幸せにならないよ。」 男「でも…」 女姉「自分の気持ちばかりを押し付ける愛情はただの自己満足だよ。そんなの本当の幸せじゃない。」 俺は息を呑む。 珍しく真剣な顔で彼女は続けた。 女姉「君がお姉さんを幸せにしたいと思っているように、きっとお姉さんも君に幸せであってほしいと思ってるはずだよ。」 姉の笑顔が浮かぶ。 俺のことをいつも大切に思ってくれている姉ちゃんの顔が… 女姉「だから、君はもっとがんばらなくていいんだよ?おねーちゃんってのは下の子が幸せなだけで嬉しくなれるんだから。」 そう言って彼女は微笑む。 それはいつもの不敵な笑みではなく、紛れも無くやさしい「姉」の笑顔だった。 男「なんかすいません…心配かけちゃったみたいで。」 女姉「いいって、年寄りの戯言みたいなもんだしねー」 男「まだ、若いじゃないですか。」 女姉「お?若い子に褒められるとおねーさんこまっちゃうなー。ん、ちゅーするか?」 男「しませんって。じゃ、俺部屋に戻りますね。」 女姉「ちぇ、つれないなー。あ、そうそう男くん。」 男「なんです?」 女姉「お姉さんの気持ちの一割でも私の妹に向けてくれるとうれしいなーって、おねーさん的には思うのですよ。」 男「え?」 女姉「女の子は大事にしなさいってことよ。じゃ、おやすみー」 そういってまた不敵に笑う。 その笑顔は何故か俺の姉の笑顔と重なった気がした。 姉「むにゃむにゃ、おとうとくんー」 女「うぅ、やめて姉さん…」 二人は同じ布団で仲良く寝ていた。 女は最初うなされていたが、姉が無意識に女を抱きしめると安心したような顔をして眠った。 それはとてもほほえましい光景で、胸が暖かくなった。 姉「おとうとくんー」 女「姉さん…」 二人の布団をかけ直しながら、俺は小さい頃に姉と一緒にお昼寝した記憶を思い出すのだった。 「幸せのカタチ」 俺には姉がいる。 母を早くに亡くし、父親にも心を許せなかった俺には唯一の家族といえる存在で、大切な人だった。 姉は知能に障害があり、人と少しだけ違っていたがとても優しい人だった。 人と違うことなんて関係ない。 俺の世界でただひとりの大切な姉ちゃんだった。 …二人はずっと一緒のはずだったのに 男「姉ちゃんを施設にいれる…?」 叔母「しょうがないことなのよ」 親父が失踪して、先日正式に親権が剥奪された。 未成年の俺は叔母の家に引き取られることになったのだが… 男「なんで姉も一緒じゃないんですかっ!?」 叔母「うちもそんなに余裕ないし、あの子あんなでしょ?誰も引き取り手なくて …」 男「それなら俺が姉ちゃんと二人で暮らしますっ!」 叔母「あなた未成年でしょ?無理なのよ…」 男「そんな…」 俺はその夜、悔しくて泣いた。 俺は姉ちゃんを守るって決めたのに… 悔しくて涙がとまらなかった。 姉「おとうとくん、どうしたの?」 男「姉ちゃん…」 姉「かなしいの?」 男「姉ちゃん、ごめん…俺、姉ちゃんとずっと一緒にいるって約束したのに…」 姉「なかないで、おとうとくんがかなしいとおねーちゃんもかなしいよ?」 男「姉ちゃん、俺達離ればなれになっちゃうんだよ…」 姉「なんで?」 男「姉ちゃんは施設にいくんだ…」 姉「おとうとくんは?」 男「俺は叔母さんの家にいかなきゃならないんだ。」 姉「そんなのやだよぅ…」 姉の顔が大きく歪む。 俺は姉にそんな顔をさせるのがまた悲しくて、声をあげて泣いた。 しかし、いつまでたっても姉の泣き声は聞こえてこなかった。 男「…姉ちゃん?」 姉は涙を必死に堪えながらも笑みを浮かべていた。 姉「おとうとくんがかなしいときにないちゃうと、もっとかなしくなっちゃうも んっ。だからなかないんだもんっ」 男「姉ちゃん。」 姉「よしよし、いいこだからなかないの。」 男「姉ちゃん、姉ちゃん…!」 姉はやさしく俺を抱きしめながら、俺を撫でてくれた。 本当は自分も泣きそうなのに、必死に涙をこらえて… 男「俺、絶対に迎えにいくから。姉ちゃんを絶対に幸せにするから…!」 姉「よしよし、おとうとくんはいいこだね。」 俺は姉の胸の中で一晩中泣いた。 俺が泣き付かれて眠るまで、姉は俺を抱きしめていてくれた。 |・・・ 数年後… 男「ただいま~」 女「おかえりなさい、今日は早いのね。」 男「仕事に区切りがついたからな。」 俺は高校を卒業してから、すぐ就職した。 今では、仕事も軌道に乗り、あの後付き合いだした女と結婚して幸せな家庭を築 いていた。 男「純は?」 女「居間で遊んでもらってるわよ。あの子もお絵かきが好きみたい。」 男「お前に似て、下手くそじゃなくなければいいんだがな。」 女「もうっ…!」 俺は今、幸せだ。 大切な妻と、大事な子供。 そして大好きな姉ちゃんに囲まれて… 姉「じゅんくん、じゅんくん。つぎはなにかく?」 純「うーんとねっ、ぱぱっ!」 姉「まかせてっ!おとうとくんはだいとくいだよっ!」 見上げると一枚の絵が目にうつった。 幸せそうに微笑む俺の大事な家族の絵が… 「おまけ」 女弟「姉さん達今頃温泉かー」 女妹「そうだねー」 女弟「母さん達も俺達置いて遊びにいっちゃうし」 女妹「そうだねー。あ、お兄ちゃんお湯沸いたよー」 女弟「今頃うまいもんくってんだろうなー」 女妹「そうだねー。あ、あたし味噌だからね」 女弟「それに比べて僕たちはカップラーメンかぁ…」 女妹「そうだねー。お兄ちゃん、3分たったよー。」 ズルズル 女妹「あーっ!あたしが味噌だって言ったじゃんっ!!」 女弟「うるせー、塩焼きそばでも食ってろ。」 女妹「むー、てりゃあっ!」 女弟「あ、てめぇ!ラーメンにマヨネーズ入れるなっ!このぉっ!!」 女妹「あー!塩焼きそばにソースかけたー!!」 女弟「うっせ、バカ妹!」 女妹「馬鹿っていうな!バカ兄貴!」 女弟「なんだとーっ!」 女妹「うーっ!」 |・・・ 女弟「なんか虚しくなってきた…」 女妹「あたしも…」 女弟「食うか、延びてるけど…」 女妹「…うん」 女弟妹「…はぁ」 「新たな命」 男「え、妊娠?」 医者「ええ、間違いないですね。」 男「そんな…」 医者「母体も健康のようですから、出産には問題はないと思いますが…」 男「最近、様子がおかしい気がしてたんです。いつもはあんなに擦り寄ってくるのに、妙に気が立ってたり…」 医者「ナーバスになってるんですよ。」 男「いったいどこの子なんだ…?」 医者「そればっかりは私には…外に出さなかったわけではないんでしょう?」 男「家に閉じ込めるのはかわいそうで…」 医者「だったらあなたの責任ですよ。嫌なら目を離さなければよかったんです。」 男「…そうですよね。それに生まれてくる子供達に罪はない。せめて、無事に生まれるよう俺がしっかりしないといけないんですね。」 姉「ねぇねぇ、それでみーはどうなの?びょーき?」 姉が不安そうに俺を見上げる。 男「赤ちゃんが生まれるんだってさ。」 俺は喜ぶと不安が入り交じった声で答えた。 数日前からペットのみーの様子がおかしかったので、俺達は獣医に来ていたのだ 。 姉「あかちゃん?みーおかーさんになるの?」 男「うん、そうだよ。」 姉「わぁっ!みーすごいっ!」 姉は素直に喜ぶ。 その笑顔を見ていると、戸惑っていた自分が情けなくなった。 男「無事に生まれるといいな。」 姉「うんっ!」 俺と姉は獣医から諸注意を受けて帰った。 女「それであそこでじっとしてるんですね。」 男「うん、たぶん心配なんだろ?昨日もあまり寝てないんだよ。」 段ボールと毛布で作った寝床でみーが横たわっている。 姉がものすごい真剣な形相でみーを見つめ続けていた。 男「姉ちゃん、それぐらいにしてアイス食べようよ?せっかく女が買ってきってくれたんだからさ。」 姉「あとでたべる」 男「え、バニラだぞ?」 姉「あとでたべるんだもん」 男「でもなぁ。それじゃあ、女に悪いだろ?」 姉「でもでもぉ、うー」 女「あ、男くん。私には任せてください。」 男「え?」 女「ねぇ、お姉さん。みーちゃんは赤ちゃんが産むために頑張ってますよね?」 姉「うんっ!だからおうえんするの」 女「応援してくれるのはすごくうれしいと思います。でも私だったらじっと見られてると緊張しちゃうと思うんです。」 姉「きんちょー?」 女「はい、だからみーちゃんも少し一人にさせてあげませんか?お姉さんのがんばれって気持ちはもう充分に伝わってますよ。」 姉「みー、わたしみてるとじゃまかなぁ?」 女「そんなことないと思いますよ。でも休まないでお姉さんが倒れちゃったら、心配で赤ちゃん産むどころじゃなくなっちゃうと思いますよ?」 姉「それはだめぇっ!」 女「じゃ、一緒にアイス食べましょ?」 姉「うん…」 姉はちらちらとみーの方をみながら、こちらに来る。 女「…でしゃばってごめんなさい。」 女が俺に耳打ちする。 男「いや、いいよ。それにすごいな、ああなっている姉ちゃんを説得するなんて。」 姉はああ見えて意外に頑固だ。 女「いえ、こういうのは私の方が向いているってだけですよ。それに」 女が悪戯っぽい顔で俺を覗き込む。 女「…私だって一応女の子なんですよ?」 そう言って女ははにかんだ。 俺は何故だかその笑顔にどきっとしたのだった。 その夜、喉が渇いた俺が一階に行くと姉が居間で寝ていた。 みーがやっぱり心配で、とりあえずここにいたらしい。 しかし昼の女の言葉を気にしてるのか、微妙にみーから離れた場所で眠っていた。 男「ったく、風邪引くぞ。」 二階から毛布を持ってきて掛ける。 姉「ん~、おかーさん…」 一瞬どきりとした。 そして姉がここまで心配している理由がわかった気がした。 姉は恐れていたのだろう。 出産の影響でみーが死んでしまい、子供達が取り残されてしまうことを。 母を亡くした俺達には、その悲しみが痛いほど理解出来るから。 男「姉ちゃん…」 俺は姉をやさしく撫でる。 姉が何かを求めるような仕種をしていたので、俺はそっと手を握った。 ふと気になり、みーの方へ目を向ける。 みーの寝床には画用紙が貼られていた。 そこには「がんばれみー」という文字とたくさんの小さなみーに囲まれる幸せそうな母猫が描いてあった。 「子猫が繋ぐ絆」 女「わぁっ、かわいいっ!」 女が嬌声をあげる。 彼女の視線の先には母猫の乳を吸う五匹の子猫がいた。 女「無事に生まれてよかったですね。」 男「ああ、本当によかったよ。」 姉「えへへー」 姉はニコニコしながら、そのほほえましい光景をスケッチしていた。 男「でもうちじゃこんなに飼えないんだよな…」 さすがにこのまま六匹も猫を飼う余裕はない。 かといって捨てるなんてことは出来るはずはなかった。 男「どうすっかな…」 女「あの、里親にだすのはどうですか?」 男「里親か…」 正直、それも考えた。 しかし、知らないところに親と離ればなれになるという状況は姉のことを考えると避けたかったのだ。 女「…よかったら、うちで引き取りましょうか?」 男「え、いいの?」 女「うちは動物好きですし、さすがに五匹ともとはいきませんが…」 男「悪いな…時々、子猫を連れて遊びに来てくれるか?」 女「もちろんです!さっさく今日、親に相談してみますね」 男「頼むよ」 姉はまだ、ニコニコと子猫達をみつめていた。 男「…姉ちゃん。」 俺は気が重くなりながらも話を切り出した。 姉「なぁに?」 姉は子猫を一匹抱きながら無邪気に尋ねる。 男「この子達な、いつまでもうちに置いとくわけにはいかないんだ…」 姉「…なんでぇ?」 姉の笑顔が凍る。 ぎゅっと胸元に子猫を抱いた。 苦しかったのか、子猫は暴れて腕の中からスルリと抜け出てしまった。 姉「あ…」 姉が悲しそうに子猫が逃げた方向をみた。 男「今のうちはいいけど、大きくなったらうちじゃ飼いきれないんだ。みーだけで精一杯なんだよ…」 姉「みーたち、おわかれしちゃうの?」 姉の顔が歪む。 姉「そんなの…そんなのだめだよぅっ!」 そう叫んで部屋を飛び出してしまった。 男「…どうすっかな。」 俺だって正直親と離れさせたくないし、姉の悲しむ顔も見たくない。 俺は一人途方に暮れるのだった。 結局、女の家は二匹貰ってもらえることになった。 俺は最後の頼みの綱に電話をかけていた。 男「もしもし、お久しぶりです。男ですが…」 保健医「あら、久しぶり~っ!元気だった?」 昔と変わらず天然そうな声が聞こえる。 男「俺も姉も元気です。それで今回はご相談があるのですが…」 保健医「なになに~?性の悩み?だめよ、ちゃんとゴムはつけなきゃ。」 男「違いますよっ!猫のことなんです。」 保健医「猫?先生はネコもタチもいけるけど…」 男「いいかげんそこから離れてくださいっ!」 俺は気が抜けながらも保健医に事情を説明した。 保健医「なるほどね、それでお姉さんも知ってる人に子猫を預かってほしいと。」 男「ええ、そうなんです。」 保健医「私も美術ちゃんも一匹づつなら大丈夫だと思うけれど…」 男「なんとかなりませんかね?」 保健医「うーん…あっ!」 男「どうしました?」 保健医「一人心あたりがいたわっ!この子ならお姉さんも納得するはずよ。」 男「え、誰なんですか?」 保健医「それは会ってのお楽しみ~。びっくりするわよ。」 男「はぁ…」 楽しそうな保健医に少しだけ不安を覚える俺だった。 姉「ほんとうにきょうつれてっちゃうの?」 男「ああ、でも安心しなって。みんないい人達だから。」 姉「うん…」 姉が不安そうに俺の服を握る。 女「それで、結局もう一人は誰だったんですか」 男「それがわからないんだよ。秘密って…」 ピンポーン 男「あ、来た。はーい」 ガチャ 保健医「お久しぶり~っ!見ないうちにいい男になったわね~。見違えちゃったわ」 美術教室「保健、その言い方だとオバサン臭いぞ。」 保健医「あー、美術ちゃんひどーいっ」 男「あはは、相変わらずですね。…それで、もう一人は?」 保健医「あ、そうそう。こっちいらっしゃい。」 後ろに隠れていたのか、眼鏡をかけた俺達と同年代の女性があらわれた。 俺はその人に見覚えがある。 男「あんたは…」 姉「あー、Bちゃんっ!」 姉が嬉しそうに駆け寄った。 男「姉ちゃんっ!?そいつは…」 姉「わたしのともだちだよっ!」 Bは俺を申し訳なさそうに見ながらも、姉に向かってはにかんでいた。 男「それじゃ、あの人が姉ちゃんを守ってくれたんですか?」 保健医「そうなの、私も最初は驚いたんだけど…」 姉とBは楽しそうに子猫達と戯れている。 女もそこに加わり、三人で笑いあっていた。 美術教師「あいつは美術部でな、よく一緒に絵を描いていたんだ。」 俺は姉の絵の中に、見たことあるが知らない女性が描いてあったのを思い出した。 保健医「あなたとしては複雑かもしれないけど…」 男「いえ、あんなに姉が嬉しそうにしてますから。それに…」 俺の代わりに姉ちゃんを救ってくれた人だから。 俺はBの姉を見つめる優しそうな目を見ながら、心の中で頭を下げた。 保健医「じゃあ、絶対にこの子連れて遊びにくるわね。」 B「私も受験が終わるまで忙しいけど、なるべく来ます。」 美術教師「私も今度は娘も連れてくるよ」 男「先生、結婚してたんですかっ!?」 美術教師「私は保健と違って行き遅れてないからな。」 保健医「もぉー、美術ちゃんっ!」 B「ぷっ」 みんなで朗らかに笑う。 しかし、姉だけはやはり寂しいのか少し沈んだ顔をしていた。 姉「ちょっとまってっ!」 姉は突然叫ぶと二階まで駆け上がる。 女「どうしたんでしょ?」 男「さぁ?」 姉は急いで戻ってくると四枚の画用紙を手渡す。 B「これは…」 そこにはみーの姿が描かれていた。 姉「さびしくないように、みせてあげてね。」 姉は優しく母親のような笑みを浮かべた。 姉「こっちこっちっ!」 美術・子「おねえちゃんまって~!」 女「あ、走ったら危ないですよ。」 猫達「みーみーっ!」 楽しそうに子猫と戯れる姉たち。 俺達はほほえましげにそれを見つめていた。 保健医「そういえばBちゃんは?」 男「学校の用事で遅れるそうです。」 美術教師「そういえば、あいつ美大に受かったらしいぞ」 男「へぇー、すごいですね。」 ピンポーン 男「はーい、いらっしゃい。」 B「お久しぶり、男くん。はい、これ今月の。」 俺に紙を手渡すと同時に、腕の中の猫が飛び出す。 子猫は走って親猫の方へかけていった。 俺達は笑いあい、紙を広げる。 そこには無邪気に遊ぶ子猫が描かれていたのだった。 「僕に出来ること」 男「じゃあ、よろしくお願いします。」 姉「うー、おとうとくーん…」 男「ちょっとの間我慢するって言ったろ?」 姉「うん…」 男「お土産買ってくるから。」 姉「…うん」 女姉「ま、お姉さんのことは私達に任せて二人は楽しんできなよっ。あ、あたしはお土産マカデミアンナッツね。」 女「姉さん、私たちは沖縄に行くんですけど…」 女姉「沖縄もハワイも変わんないじゃん。」 女「大分違うよっ!…姉さん、くれぐれもお姉さんに変なこと教えないでよ?」 女姉「心配しないでよ、あたしは信頼は裏切っても、期待は裏切らないわ。」 女「だから不安なんですっ!」 女妹「大丈夫だよ、ちい姉ちゃん。私たちもいるし。こちらこそ、ちい姉ちゃんのことお願いしますね、お義兄さまっ!」 男「あ、うん」 女「ちょ、ちょっとっ!」 女妹「あ、私はお土産珊瑚の石がいいなぁ。瓶に入ったやつ。」 女「…もうっ、それで女弟はお土産何がいい?」 女弟「別になんでもいいよ。」 女「そう?」 男「じゃ、姉ちゃん行ってくるな」 姉「おとうとくん、はやくかえってきてね。」 男「ああ、いってきまーすっ」 姉「いってらっしゃーいっ!」 男「…ところで女、なんで女の妹は俺のことお義兄さまって呼ぶんだ?」 女「さ、さぁ?なんででしょう」 女姉「さてと、私は朝ご飯作るから、女妹はお姉さんと遊んであげてて?」 女妹「はいなっ、おねーさん行こ?」 姉「うん」 妹が彼女を連れてリビングに向かう。 僕はついその後ろ姿を目で追ってしまった。 女姉「なに、気になるの?」 大きい方の姉がからかうように微笑む。 女弟「べ、べつにそんなんじゃないよ。ただ勉強の邪魔しないでほしいなって思っただけ。」 女姉「あんたねぇ、受験も終わったのに勉強って…ろくな大人にならないわよ。」 女弟「姉さんみたいにはなりたくないからね、僕は。」 女姉「くそ生意気な。あんただけ朝ご飯魚の目玉だけにするわよっ!DHAの過剰摂取で死ぬがいいわっ!」 女弟「はいはい。じゃ、僕は勉強してくるから。」 女姉「ちょっと待ちなさいっ!」 僕は姉の言葉を無視して、部屋に戻った。 下の姉達の学年が修学旅行に行ってしまうので、少しの間、男さんのお姉さんを預かることになった。 たまたまその期間、父も母も出張で家にいないので、家には僕たち姉弟と男さんのお姉さんしかいない。 女弟「…はぁ」 確かに上の姉が言った通り、お姉さんが気になってはいた。 別に好きになったとかではない。 どう接していいかわからなかったのだ。 僕は学校でも勉強ばかりしてきたので、あまり人付き合いがうまい方ではない。 それにお姉さんが障害者というだけで一歩引いてしまう自分がいた。 女弟「一週間かぁ。」 それくらいならなんとかなるか。 僕はなるべく彼女と関わらない方向性でいくことに決めた。 女弟「え、僕とお姉さんだけしかいないの?」 女姉「夜までね。私は大学の用があるし、女妹は今日部活みたい。」 女弟「マジかよ…」 女姉「ってことで、お姉さんの面倒お願いね。あ、一応言っとくけど襲うなよ?」 女弟「誰が襲うかっ!」 二人が出掛けてしまった後、僕は途方に暮れていた。 ただでさえ、どうしたらいいかわからないのに二人っきりだなんて… 姉「あわわっ!」 その時、洗面所の方で叫び声がした。 急いでいくと何故かお姉さんが水浸しになっている。 女弟「ど、どうしたんですか?」 姉「おとうとくん、あのね…!」 お姉さんは振り向き、そう言いかけて止まった。 姉「あ…う、みずがね、びゅーってでたの…」 彼女は少し悲しそうな顔をして言ったが、僕には気付くほどの余裕はなかった。 お姉さんの服が濡れて張り付いていたのが、とても煽情的だったからだ。 女弟「と、とにかく、着替え持ってきますから、お風呂に入っててください!」 姉「…うん、ごめんね。」 その後も何度か彼女は僕を見た後、悲しそうに目を背けることがあった。 僕は相変わらずどう接していいかわからなかったが、無性にそれが気になっていた。 女弟「えぇっと、野菜を切ると…」 昼、僕は上の姉のメモを参考に昼食のカレーライスを作っていた。 しかし、料理など調理実習でしかやったことがない。 僕は慣れない包丁に戸惑っていた。 女弟「じゃがいもは…あいたっ!」 じゃがいもの芽を取っていたら、包丁が滑って指を切ってしまった。 指先に血が滲む。 女弟「やっちゃった…」 僕が指を押さえていると、声を聞いたのかお姉さんが台所に駆け込んできた。 姉「おとうとくん、だいじょーぶっ!?」 彼女は僕の手を見て、真っ青になる。 姉「おとうとくん、だいじょーぶ?しんじゃ、やだようっ!」 動転して、僕のことをおとうとくんと呼ぶ彼女。 僕は彼女の僕を見る視線の意味に気付いた。 女弟「…僕は男さんではないですよ。」 姉「…あ、あぅ。ごめんね、でもだいじょーぶ?」 僕が男さんではないということがわかっても、彼女は心配そうに僕を見ていた。 やっぱり彼女は淋しかったんだ。 男さんと長い間、会えないから。 我慢しようと頑張って、でも淋しくて同年代の僕を男さんに見間違えてしまったんだ。 その瞬間から、彼女は僕の中で何考えているかわからない自分と違った存在から、普通の女の子になった。 そう思うと彼女に悲しい顔をさせているのが、とても切なくなる。 僕の口は自然に開いた。 女弟「大丈夫ですよ。かすり傷です。」 姉「でも、いたいいたいだよ?」 なお、泣きそうな顔で迫る。 僕が男さんではないとわかっていても、心配してくれるのがうれしかった。 女弟「淋しいですか?」 お姉さんがびくっと体を震わせる。 僕は無意識に血がついていない方の手で彼女の髪を撫でる。 女弟「あの、僕では代わりになれないかもしれないですけど、僕のこと弟って思っていいですよ。」 どきどきしながらそう言う。 彼女に僕自信を見てもらいたかったのだ。 お姉さんはきょとんとした顔をした後、不思議そうに答えた。 姉「でもおとうとくんはひとりだけだよ?」 僕は急に自分が恥ずかしくなった。 一人で突っ走って何やってんだろう。 しかし彼女はほのかな笑みを浮かべ、予想外のことを言った。 姉「じゃ、きょうからおとーとくんね?」 女弟「え?」 姉「おとうとくんはひとりだけだから、おとーとくんなの。」 そう言って優しげに笑う。 突然で言葉の意味が頭に入ってこなかったが、自然と笑みが広がるのがわかった。 それから僕たちは僕の作ったカレーライスの出来損ないを食べて、一緒に遊んだのだった。 気付くともう夜になっている。 女姉「ただいまー」 姉「あ、おんなあねちゃんみてみてー」 女姉「この絵はうちの頭でっかちな弟?」 姉「うん、おとーとくんっ!」 女姉「あんた達いつの間に仲良くなったの?」 姉「えへへ、ねー?」 お姉さんが楽しげに微笑む。 その笑顔を見ていると僕までうれしくなった。 女弟「うんっ!」 だから僕も微笑む。 今日出来た僕のもう一人の姉を喜ばせるために。
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574 名前:工作姉1[sage] 投稿日:2011/09/22(木) 13 53 12.87 ID Vxnxqpwm 「んじゃ、早くSS投下してみせてよキモ姉妹さん、と……」 タタタタン、ターン! 淀みない手つきでキーボードを叩き終えると、軽快にエンターキーを押す。 明らかな敵意に対してもスレの反応は疎ら。ついに、ついに俺は勝ったんだ! 「ようやくこの忌まわしいスレも……やった! やったよ××××!」 576 名前:工作姉2[sage] 投稿日:2011/09/22(木) 13 58 33.53 ID Vxnxqpwm ……そう、事の発端はこのパートスレが立ったところから始まる。 今までマイナージャンルだった(と思いたい)キモ姉、キモウトを題材にしたスレ。 同じように姉がいる自分も始めこそ、興味本位で眺めいていただけだった。姉はキモくないし。 ただ、スレが順調に伸びていった数カ月後、俺はあう噂を耳にする。 キモ姉、キモウトに目覚める姉妹が増えている、と。 ただの冗談だと思った。どうせモテない男の気持ち悪い願望だと思っていた。 俺は俺で中学時代から付き合っていた彼女がいたし、大学に進んでもラブラブ。 気は早いけど、彼女とのゴールインだって考えていた。そう、俺の日常は順調だったんだ。 それは、件のスレがピークとも言える盛り上がりを見せている頃だった。 『どうしたの? 昇くん』 『姉さん……彼女が、俺の彼女が……』 彼女が死んだ。車にはねられたらしい。目撃者はナシ。即死。 ただ伝えられた情報だけが頭の中を素通りしていく。何も考えられない。 『姉さん……』 『昇くん……おいで』 彼女を失った悲しみ。例えようもない絶望。 その時、姉の温もりに縋ってしまったのは今でも悔やみ切れない。 577 名前:工作姉3[sage] 投稿日:2011/09/22(木) 14 03 56.54 ID Vxnxqpwm 『昇くん、ご飯持ってきたよ』 『……いらない』 『……ここ、置いておくからね』 それから一人、塞ぎこむ俺を姉は優しく見守ってくれた。 俺よりも僅かに背が高く、グラビアアイドルも顔負けのスタイル。おまけに美人となれば悪い気もしないのだけれど、それよりも彼女の死という痛みが強すぎた。 『昇くん、悲しいのは分かるけど何か食べないと昇くんが』 『うるさい! 俺の何が分かるんだ! 出てけ!』 『あ……ごめんね』 姉にキツイ言葉を浴びせる毎日。そうしないと俺の精神が持たなかったのかもしれない。 それでも、それでも尽くしてくれる姉に俺はもっとヒドイことをしてしまう。 『昇くん。お姉ちゃんじゃ、あの子の代わり出来ないかもしれないけど……』 『なんだよその目は……あいつの代わり? じゃあ、こういうこともしてくれるのか!?』 『キャッ……!』 『ほら、怖がれよ! こんなクソみたいな弟に襲われて犯されそうになってんだぞ! 怖がれよ!』 『……良いよ、昇くんなら』 『ち……ちくしょぉぉぉ!』 何度も何度も姉を抱いた。意外にも処女だった姉の体を汚し、溺れ、朝日が見える頃になってようやく俺は泥のように眠った。 彼女が死んでから、初めてマトモに眠ることが出来たのだ。 その日から俺と姉の仮初めの恋人生活は始まった。 もう両親からも見放され、頼れる人間は姉一人だけだったのだ。朝、起きれば姉の体を貪り、夜になれば姉に抱かれて眠る。 色欲に溺れる中でも徐々に徐々に、俺は以前の自分を取り戻していった。 578 名前:工作姉4[sage] 投稿日:2011/09/22(木) 14 09 00.61 ID Vxnxqpwm 『昇くん、本当に良いの?』 『うん。姉さ……いや、茜に救われた俺が出来ることなんて、これぐらいしかないし』 『昇くん……』 その後、なんとか人並みに戻った俺は家を出て姉と同棲することに決めた。もうその頃には姉への恋愛感情を自覚し、姉とは本当の意味で恋人になっていた。 大学も辞め、両親とはもう絶縁状態の俺が出来ることは、姉への恩返しだと思っていたからだ。 そうして始まった同棲生活。幸せだった。本当に幸せだった。 あのスレの存在を思い出すまでは。 アルバイトを終えた俺は、姉の帰宅を待つまでの間、久しぶりに例のスレを覗いてみることにした。 姉がいるとなかなかパソコンを触ることさえ出来ないせいか、色々と悶々とした気持ちがあったのだろう。 以前よりも更に勢いを増すスレも、相変わらずその内容は変わらない。相変わらずキモオタ共が騒いでいるのに俺は安心すらしていた。 しかし、その中で俺はある書き込みに気づく。 このスレのおかげでようやく弟くんが手に入りました。もう手放さない。 キモ姉、キモウトが増えているらしい。 そこでようやくあの噂を思い出す。なにより驚いたのが、根も葉もない噂程度であったアレがこのスレでは厳然とした事実として受け止められていることだ。 スレに返答が続く。 おめでとうございます。ついに成就したのですね。末永くお幸せに また一人、このスレの犠牲……いや、目覚めた人が出たのですね マジでこのスレのおかげでキモ姉、キモウトが増えてそう 579 名前:工作姉5[sage] 投稿日:2011/09/22(木) 14 14 01.96 ID Vxnxqpwm どうしようもない雑談にも、俺の心は妙にざわついていた。同時に、俺はあの事故の前後を必死に思い出そうとしていた。 そもそも姉とはそこまで仲が良かったのか。落ち込む俺を甲斐甲斐しく世話してくれるほど、姉は俺に好意を抱いていたのか。 あの事故の前に、やけに具体的な泥棒猫の処理方法を書き込んでいるキチガイがいなかったか……。 単発のIDだったその自称キモ姉は、最後にこう締めくくっていた。 弟くん。これからずっと、ずぅっと一緒だよ 『昇くん。これからずっと、ずぅっと一緒だよ』 ……疑念が果たして俺の行動にどう影響しているのか、今でも分からない。 ただの憂さ晴らしなのかもしれない。もう時計は元には戻らない。彼女は帰ってこないのだ。 それでも俺はこのスレを潰すために躍起になっている。名を騙り、煽り、過疎らせる。 こんなことをして何の得があるのか。そんなもの、俺にだって分からない。支離滅裂なことだって分かってる。 それでも、あの書き込みは姉のものではない。確証なんて得られないものなのに、否定したくて俺はみっともなくキーボードを叩いている。 タタタタン、ターン! 「ようやくこの忌まわしいスレも……やった! やったよ××××!」 ガチャ 「ただいま昇くん……あら、パソコンで何をしてるの? それと、どうしてあの泥棒猫の名前なんて呼ぶの?」 終わり
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GSを脱退させられた理由を以下に記載します。 ■揉め事が起きたそもそもの原因 9月にGSで東大阪の団体戦に出場しました。 試合中、モトヒデの様子(体調)がおかしかったけど本人は「大丈夫」というのでそのまま続けました。 試合後、テル・そうし・クニ・あつし・トモヒロは打ち上げに。モトヒデは「家族と用事があるから」ということで一人別で帰りました。 翌日の練習にダイちゃんとモトヒデが参加になっており、ダイちゃんがテルに「明日の練習はあるのか」尋ねていました。 そうしテルが参加すれば4人でなんとかテニスができると思いモトヒデに連絡するも一切連絡がとれません。 体調を悪そうにしてたし事故にあったんじゃないか。など悪い想像が膨らみノブカズに電話しました。 ノブカズは「全然なにも聞いてないよ。試合後も会う予定じゃなかったし分からない」とのこと。 モトヒデに電話やメールをしても夜中まで連絡がとれず、朝を迎えました。 翌朝、テルからノブカズと喧嘩していてモトヒデと連絡がとれない旨を聞かされました。 心配なので、モトヒデの実家まで無事帰宅しているのかだけを確認するために、車を見に行きました。 そうすると偶然、車にモトヒデが乗っていたので少し会話をしました。 ソウシ・テル「あ、モモ、大丈夫?昨日から連絡しててんけど全然とれないから心配になって様子だけ見に来た」 もとひで「大丈夫~ありがとう。」 その表情は引きつっていてあきらかに様子がおかしいです。 帰宅後、詳細忘れましたがノブカズのことで何かを隠しているような発言があったので問いました。 そうすると、ノブカズ→テルに宛てられたメールに詳細覚えていませんが、ザッとこんな内容が書かれていました。 「モトヒデのこと聞かれても知らん。テニスも4人以下なら中止って分かるやろ。 俺は代表じゃなくてコート取ってるだけやしモモが無理ならガガに聞けばいい。腹立つ」 的な内容。 そのあと、二人は仲直りしたらしいけど俺だけ連絡がこなかった。 そんなことがあり、ソウシはノブカズとモトヒデに距離を感じ、深く接しないでおこうと。そうすれば変に心配しなくても済む。と考えました。 その考えをテルに伝えると「ノブカズはプライドもあるしそうゆう子やねん。分かったって。もし、それが分からないんやったらそうすればいいんちゃう」 ノブカズとモトヒデのことでソウシとテルの意見がぶつかり、喧嘩してしまいました。 そのことをテルはセージ、ガガ、ノブカズ、モトヒデに相談していた。 俺からするとテルは意識してないと思うけど、相談という名の味方作りをしていて多勢に無勢、まさにケンちゃんのときと同じ状況。 そうし 対 GSコアメンバーって感じ。 以上が最初の原因です。 TOPへ 原因1へ 原因2へ 11月19日以降
https://w.atwiki.jp/dppb/pages/23.html
原因分析 家に置く場所がないから。 電灯をつけるのが面倒だから。 教室から駐輪場が遠いから。 歩行者スペースと自転車スペースが構内のどの場所においても一体となっているため。 大学構内では、登録なしでも無料で自転車が駐輪できてしまう仕組みのため(本来は違反)。 調布駅が至近という立地条件。 鍵をかけていなかったり、一重ロックの自転車が多いため。 鍵をかけるのを面倒。特に短時間の駐輪の場合 自転車を駐輪場に置いて構内を移動することがあるため。
https://w.atwiki.jp/jyunane/pages/12.html
「決意」 俺が中学1年の時、母が死んだ。 父はもともと家に寄り付かなかったが、母が死んでからはさらに留守がちになり、たまにいても酒ばかり飲んでいた。 正直、この時期のことはあまり思い出したくない。 俺はあまり姉が好きではなかった。 今思うと子供っぽい八つ当たりだったのであろう。 母が死に、世界の全てが冷たいように感じついた俺は、脳天気そうに笑う姉が疎 ましくさえ思えた。 姉「おとうとくん、おとうとくん。」 男「…なんだよ」 姉「いっしょにてれびみよ?」 男「ひとりで見りゃいいだろ」 俺はそっけなく言い放ち自室に篭る。 やたらめったら俺に構うのがうっとおしかったし、母が死んでも関係なさそうに ニコニコ笑ってる姉に無性に苛ついた。 …なんなんだよ、もう。 電気もつけずにベッドに座り込む。 男「母さん…」 真っ暗な部屋の中で俺は一人ふさぎこんだ。 ガッシャーン! 突然、一階から大きな物音が聞こえた。 急いで下に降りると台所であわあわとしている姉がいた。 男「何やってんだよっ!」 姉「おりょーり…」 見ると床には割れた皿が散らばっている。 男「余計なことすんなよ!」 姉「ごめんね、おとうとくん、ごめんね。」 姉の瞳から涙がこぼれ落ちる。 が、急にはっとなり、顔をごしごし拭くとぎこちなく微笑んだ。 姉「つぎはがんばるね」 その笑顔を見ていると、何故だか胸の奥が苦しくなった。 男「いいから、とっとと部屋に帰れよ。」 そう言い捨てると、姉は一瞬とても悲しそうな顔をして、とぼとぼと部屋に帰っ ていった。 姉「っう…ぐすっ…」 となりの部屋からの物音で目を冷ました。 不審に思い部屋を抜け出すと、姉の部屋のドアが 少し開いていた。 姉「ううぅ…ぐすっ、おかーさん…うぇ、うえぇぇぇ…」 姉が泣いていた。 綺麗な顔をくしゃくしゃに歪め、大粒の涙をこぼしていた。 姉「おかーさん、おかーさん…さびしいよぉ。ううぅ、うわぁぁぁん…」 母が死んで以来、大声で泣かなかった姉が頭を振り乱して泣いている。 姉「おかーさん、なんでしんじゃったの?ぐすっ、やだよぅ。おかーさぁん…」 姉は脳天気に生きていたわけではない。我慢していたのだ。 俺に涙を見せないよう。 俺を悲しませないために。 本当はいつも泣き叫びたいくらい淋しいのに …姉ちゃんは俺のことを励まそうとしてくれてたんだ。 胸の中の悲しみを隠し、やさしい笑顔で。 こんな自分のことしか考えないダメな弟のために。 気付くと俺も泣いていた。 死ぬ直前の母の言葉を思いだす。 お姉ちゃんのこと、守ってあげてね 守られていたのは俺の方だった。 鳴咽が洩れないように唇を噛み締める。 姉「おかーさん…ぐすっ、おかーさん、おかーさん、あいたいよぅ…」 男「姉ちゃん…」 姉「…おとうとくん?」 姉は慌てて顔を伏せる。 俺は彼女の頬に手を添え上を向かせると、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を そっと拭いた。 男「…姉ちゃん、ごめん。」 ぎゅっと抱きしめる。 安心したように姉の体から力が抜けた。 姉「おとうとくん、おとうとくん…!」 姉は俺の前で母さんが死んでから初めての鳴咽をあげる。 俺の目にもまた涙があふれる。 今度は俺も我慢せず声をあげて泣いた。 涙を全て流し尽くして、明日から笑顔で姉と接するために。 男「姉ちゃん…俺が絶対に姉ちゃんを守るから。」 小刻みに震える彼女を抱きしめながら、俺はそう誓うのだった。 「彼女の居場所」 これは俺と姉が中学に通っていた頃の話。 授業が終わった俺は、帰り支度を終え、姉を教室まで迎えに行く。 男「…あれ、いない?」 教室の中に姉はいなかった。 どこにいったんだろう。 男「あの~、姉しりませんか?」 上級生「姉さん?んー、5時間目にはもう居なかったけど。」 男「え!?なんかあったんすか?」 上級生「体育の時にちょっとトラブってたみたいだからね。いつもの所にいるわ よ、たぶん」 男「いつもの所?」 上級生「保健室よ、彼女なんかあるとすぐあそこにいくの。弟なのに知らないの ?」 男「あ…はい。」 俺はつい最近まで姉を避けていた。 今更ながら、姉が学校にいる間の様子を全然知らないことに気付いたのだ。 男「…それで、姉に何があったんですか?」 上級生「あー、それは…」 上級生が気まずい顔をして口ごもった。 教室の奥から彼女を呼ぶ声がする。 上級生「あ、今行くーっ!ってことでごめんね。じゃあ」 明らかにホッとしたような顔をしながら、彼女は教室に引っ込んだ。 俺はそれを不審に思いながらも保健室に向かったのだった。 男「失礼しまーす」 保健医「あら、珍しいわぁ。男くんがここに来るなんて。なに、性の悩み?」 男「違いますよっ!姉ちゃん来てないかなって思って。」 保健「お姉さんを迎えに来てあげたんだ?えらいわねぇ。」 男「いえ…で、姉ちゃんは?」 保健医「残念、ここにもいないのよ。」 男「え、なんでですか?」 保健医「彼女は美術準備室にいるわ。美術教師ちゃんと一緒にねぇ。」 男「美術準備室?」 保健医「あの二人、妙に波長が合うみたいなのよね。お姉さんが放課後までここ に居ると、ひょこっと来て連れてくのよ。」 姉が美術教師と仲がいいなんて初めて知った。 同時に今まで姉の帰宅が妙に遅かった日があったことも思い出した。 保健医「今日はたまたま午後は授業無かったみたいだから、ここで一緒にお茶し てたのよ。そしたらお姉さんが入って来てね。」 男「そうだっ!どうして姉はここに通ってるんですか?」 保健「あなた…もしかして知らないの?」 保健医の顔が曇る。俺は背筋を廻る嫌な予感に必死に堪えながら、言葉を促した 。 保健医「お姉さんは、いじめられているみたいなの。」 背筋に電撃が走ったみたいだった。 無意識に握った手が震える。 男「…いつからですか?」 保健医「入学当初から兆候はあったわ。あの子、人と少しだけ違うからってどん 臭いと馬鹿にされてたみたい。」 男「そんな昔から…」 保健医「でも授業中にも来るようになったのは最近なことね。どうやら今年に入 って、クラスの目立つ子に目をつけられちゃったみたいなのよ。」 俺は怒りと情けなさでどうしようもなくなった。 握った手さ力をいれ過ぎて白くなっている。 男「姉ちゃんは家では何も言ってませんでした…」 保険医「知ってたかな?あの子は見かけより強い子なの。ここに連れて来たのも 一人でポツンとしてたからなんだけど。ここでもあまりそういうこと話したがら ないのよ。」 姉が強いことはもちろん知っていた。 俺は長い間その強さに甘えていたから。 保険医「それでも私達が守ってあげなきゃいけないのにね。」 保健医が辛そうな目をして呟いた。 その言葉は俺の心に突き刺さる。 不甲斐ない俺を責めている言葉のように聞こえた。 保健医「私はお姉さんのお話を聞くくらいしか出来ないわ。だからあなたがお姉 さんの支えになってあげて。」 保健医が俺の手を取り握った。 保健医「お姉さんね、あなたの話をする時、とてもうれしそうな顔をするのよ。 あなたのことが大好きなの。」 俺は胸が熱くなる。 男「…はいっ!」 俺は力強く頷くと、勢いよく頭を下げた。 男「ありがとうございますっ!…それとこれからも姉のことお願いします!」 保健医「あらあら、いいのよ。私はお姉さんとお話出来て楽しいし。」 男「それでも、先生がいてくれて姉は救われたと思いますから。」 保健医「本当にあなたはお姉さん想いのいい子ね。先生、関心しちゃうわ。」 男「…そんなことないですよ。」 保健医「あー、もうっ!初々しくてかわいいわ。あなたも何か悩みがあったら遠 慮せず来なさいね。先生がなんでも聞いちゃうわよんっ、愛の話でも、性の悩み でも。」 男「…あはは、考えときます。」 保健医「とにかくあの子は美術授業室にいるわ。早く迎えに行ってあげなさいね 。」 男「はいっ、ありがとうございました!」 俺はもう一度頭を下げ、保健室を飛び出した。 コンコン 男「すいませーん」 美術準備室をノックするが返事がない。 男「誰もいないんですかー?」 ドアノブに手をかけると鍵はかかってないみたいだった。 男「失礼しまーす…」 ドアを開くと、狭くごちゃっとした部屋が広がる。 部屋の奥には二人の女性がいた。 一人はイーゼルの前で筆を振るう美術教師。 もう一人はスケッチブッグにペンを走らせる俺の姉。 二人とも黙って絵を描き続ける。 その部屋は独特の空気で満ちていたので、俺は声をかけられず突っ立っていた。 美術教師「…座ったらどうだ?」 男「え?あ、はい。」 急に声をかけられて驚く。 俺は誘われるまま椅子に座る。 美術教師は何事も無かったようにイーゼルに向き直る。 姉を見ると彼女は珍しく真剣な顔をして、絵を描いている。 姉「できたー!」 絵が描けたみたいだ。 とことこと美術教師の所に向かい、スケッチブッグを手渡す。 姉「せんせい、みて」 美術教師「…ん」 美術教師はスケッチブッグを手に取るとしばらく無言で見つめた。 美術教師「いい絵だな。」 美術教師は笑みを浮かべ、姉の頭をわしわしと撫でる。 それはいつもの愛想のない顔からは想像出来ないやさしい笑顔だった。 姉「えへへ」 気持ちよさそうに姉は目を細める。 姉「あ、おとうとくんっ!」 やっと俺に気がついたみたいだった。 それほど集中していたのだろう。 姉「おとうとくんもみてー!お絵かきしたの。」 うれしそうに今度は俺にスケッチブッグを突きつける。 そこには驚くほど精密にうちの台所が描いてある。 男「…なんで台所?」 俺は思わずそう答えたが、内心その絵の上手さに舌を巻いていた。 姉「おりょーりしてるおとうとくんなのっ!」 彼女がうれしそうに答える。 確かに鍋をおたまで掻き回してるのは俺だ。 姉「へへ~、うまいでしょお?」 男「うん、すごい上手だよ。」 姉「でしょーっ!」 姉は得意げに微笑んだ。 美術教師「男も来てることだし、今日はもう帰りな。鞄は保健室だろ?とってき なよ。」 姉「はーいっ!」 姉は元気に答えると美術準備室を飛び出した。 男「あ、じゃあ俺も…」 美術教師「待ちなよ、コーヒーでも飲んでけ。」 男「え?あ、はい…」 俺は唐突な言葉にまたも思わず頷いた。 電気ポットからお湯を注ぎ、インスタントコーヒーを作る。 美術教師「悪いな、砂糖もミルクも無いんだ。」 俺「ブラックで大丈夫です。」 俺はカップを受け取ると、一口含む。 正直苦くておいしくなかったが、続けて胃の中に流し込んだ。 美術教師「…最近、絵のタッチが変わったんだ。」 男「姉のですか?」 美術教師「前は機械みたいにただ精密なだけの絵を描いていた。けれど最近は急 に温かいタッチになったんだ。」 男「…なんでなんですか?」 美術教師「絵には感情が表れる。何かうれしいことでもあったんだろう。」 そう言って、彼女は俺を一瞥する。 美術教師「それにな、前は絶対に人物を描かなかったんだ。でも最近はどの絵に も必ず描いてある。」 俺は先程の絵を思い返した。 あの絵に描いてあったのは… 美術教師「おまえのこと描いている時が、1番楽しそうだぞ。」 俺の胸がじんわりと暖かくなる。 目元に涙が滲んだ。 美術教師「悪い、煙かったか?」 彼女は無表情で煙を背けた。 俺にはなんだかその顔がとてもやさしく見えた。 ドタドタ、バタンっ! 姉「おとうとくーん、かえろぉっ!」 俺は慌てて目元を拭った。 男「うん。それじゃあ、失礼しました。」 俺は美術教師に礼をして、姉の手を引いた。 美術教師「守ってやれよ。」 美術教師が小さく、しかしハッキリと言ったのが聞こえた。 俺は振り返るが、彼女はもう窓に手をかけ、煙草をふかしていた。 姉「せんせい、さよーならぁ。」 姉が元気よく声をかけると、彼女は後ろを向いたままけだる気に手を振った。 そう言って煙草に火を点けた。 |・・・ 男「ねぇ、姉ちゃん」 姉「なぁに?おとうとくん。」 男「今度、俺も一緒に保健室行っていいか?」 姉「うん、いいよー!あ、でもでも、せんせいのとこもいっしょがいいなっ!」 男「美術の?」 姉「うんっ!…だめ?」 男「もちろん、いいよ」 姉「やったあっ!」 俺は繋いだ手に力をこめる。 そこには確かに姉の温かみがあった。 男「姉ちゃん」 姉「んー?」 男「今日はシチューにしようか?」 姉「シチュー好きぃっ!」 喜ぶ姉の顔を見ていると、この笑顔を守るためなら何でも出来る気がしてきた。 俺は姉を悲しませる全てを取り除けるように強くならなければならない。 俺はそう決心すると共に、心の中で二人の教師に感謝した。 「果たせない誓い」 俺が姉と登下校を共にするようになってから二週間経った。 その間、姉はいつもニコニコしていたが、時々小さい怪我をしているのが目につ いた。 理由を聞いても、ただ転んだと言うばかりだったが、俺にはどうして傷がついた か想像がついた。 俺は何も出来ないことを不甲斐なく思ったが、姉の前では必死に笑顔を保ち続け た。 男「…どうしたらいいんでしょうか?」 保健医「うーん、難しいわね…」 俺は保健医に相談することにした。 正直、俺の中で頼れる大人は彼女と美術教師しかいなかったのだ。 保健医「そういえば、お姉さんは?」 男「今は美術の先生の所にいます。」 保健医「そう。…それでいじめのことなんだけど、これはとてもデリケートな問 題なの。わかる?」 男「…ええ」 保健医「一方的に叱りつけるだけじゃなんの解決にもならないことが多いの。そ れに、彼女の場合は相手もいじめてるって意識してない場合もあるし…」 男「じゃあ、何もせずに虐められなくなるまで待ってろって言うんですかっ!? 」 保健医「落ち着いて。直接的な手段に出るのは危険だって言ってるだけよ。何も 出来ないわけじゃないわ。」 男「…すいません」 保健医「ううん、私も言葉を選べばよかったわ。それにね、あなただから出来る こともあるの。」 男「なんですか?」 保健医「そばに居て、支えてあげて。」 男「それだけですか?」 保健医「それだけでお姉さんはずいぶん救われるはずよ。ね?」 男「…はい。」 保健医「そんな顔しないの。あなたが暗い顔してると、お姉さんも悲しむわよ? 」 保健医がむにーっと俺の頬を抓る。 男「い、いたいっす。ちょ、やめてくださいっ!」 保健医「元気でたら放してあげる。」 男「でました!でましたから放してくださいっ!」 保健医「ならよろしい。」 男「ってて…」 保健医「元気出たなら迎えにいってあげなさい。きっと待ってるわよ。」 男「…はい、ありがとうございました。」 俺は少し赤くなった頬をさすりながら保健室を出た。 次の日 男「つ、疲れた…」 体育の授業が持久走だったので、へとへとになりながら水飲み場に向かう。 急いで蛇口を捻り、浴びるように水をがぶ飲みした。 男「ふぃ~、生き返るぅ。」 ひとごこちついていると、体育館裏から姉の声が聞こえた気がした。 俺は無性に気になり、声がするほうに向かった。 上級生A「あんたのせいで負けたじゃないっ!」 姉「ごめんなさい、ごめんなさい…」 上級生A「本当になんもできないのね。足引っ張るなら授業に出なければいいのに 。」 体操着姿の姉が数人の女子に囲まれている。 上級生A「あんたなんかいなければ、順調に勝ってたはずなのに。あんたがぐずで のろまなせいでっ!」 姉「ごめんなさい、ごめんなさい…」 上級生B「…たぶんこの子わかってないのよ。話してる間中もずっとごめんなさいっ て言ってるだけだし。」 上級生A「人の話も聞けないのね、これだから…」 上級生C「しょーがないよ、こいつうちらと違うから。」 上級生B「ねぇ、もういいでしょ?教室に戻ろ…?」 上級生C「なんでよー?つまんないこと言わないでよ。ノリ悪いなー。」 上級生A「私はこのままじゃ納得いかないわよ。まったくなんで同じクラスにすん のよ。クラスわけりゃいいじゃない。」 上級生C「大人のじじょーってやつじゃない?」 上級生が耳障りな声で笑う。 笑い声に釣られたのか、姉は顔をあげ、にへらっと笑った。 上級生A「何笑ってんのよっ!?」 ドンっ! 姉の態度が癪に障ったのか、上級生の一人が姉を突き飛ばす。 姉「いたぁっ!いたいよぅ…」 姉は泣きそうな目で彼女達を見つめた。 上級生A「何よ、あなたが悪いんじゃない。」 姉「…ご、めんね。ごめんなさい、ごめんなさい…」 男「やめろっ!」 俺は思わず飛び出していた。 上級生A「なに、あなた?一年生?」 男「姉ちゃんをいじめるなっ!」 上級生C「この子、こいつの弟だよ。」 姉「おとうとくん…」 上級生A「何よ、私はただ文句を言っていただけよ。」 男「だからってやり方があるだろう。あんた達がやってるのはただの弱いものい じめだっ!」 上級生A「文句とか言われたくないなら、それ用の学校とか行けばいいでしょ?迷 惑なの、こっちは。 」 男「姉ちゃんは普通の学校に通えるから、通ってんだっ!あんたらはただ出来な いことがあるのを笑ってるだけだろ!?」 上級生A「は?わかったような口聞かないでよ。一緒のクラスにいる私達の身にも なってみてよね」 男「なんだとっ!」 その時、俺の袖がくいっと引かれた。 顔を向けると、姉が悲しそうな顔して俺を見ていた。 姉「おとうとくん、おこってるの?おこっちゃやだよぅ…」 男「姉ちゃん…」 姉「けんかしちゃやぁ。おとうとくん、おこんないで…」 姉の目に涙が光る。 その顔を見てると俺はもう何も言えなくなってしまった。 上級生B「ねぇ、そろそろ授業始まるよ。行こう…?」 上級生A「…ふんっ、行くわよ。」 上級生C「あいつ、ちょーうざいんだけどー。」 上級生達が去っていく。 一人が何故か心配気に振り返ったが、その時の俺は気付かなかった。 姉「おとうとくん、もうおこってない?」 姉が不安そうに俺を見上げる。 男「…うん、ごめんな」 姉が俺の胸に顔を埋め、ごしごしと擦る。 姉「おとうとくんはおこっちゃやだよぉ。」 男「ごめん、ごめんな…」 俺は自分の短慮で姉を悲しませていることが悔しかった。 男「…姉ちゃん、ごめん」 守るって決めたのに… 姉を守る力もない自分が不甲斐なくて、強く歯を噛み締めた。 「魔法」 私は卑怯者だ。 A「ほら、さっさとしなよ!」 C「あははっ!そんなんじゃ終わらないよー」 姉「あぅ…うんしょ、うんしょ」 彼女が小突かれながら次の授業の教材を運んでいる。 私は彼女達の少し後ろを歩きながら、彼女を見つめていた。 C「やっぱあいつどんくさいよねー」 A「ほんとっ、いらいらする。ねぇ、B?」 B「あ、うん…」 愛想笑いをしてやり過ごす。 ちくりと胸に痛みが走った。 姉「あわわっ!」 ガッシャーン! 彼女はダンボールの中身をぶちまけてしまった。 A「なにやってんのよ!」 自分が小突いたせいなのに、さも彼女が悪いように罵る。 A「さっさと拾いなさいよっ!」 姉「ごめんなさい、ごめんんさい…」 慌てて這い蹲り、拾おうとするがうまく集められないようだった。 C「さっさとしないと日が暮れちゃうよ~」 Cがニヤニヤしながら彼女の手元の地図を蹴った。 私の胸の痛みが増す。 思わず、声をあげてしまった。 B「ねぇ!」 A「どうしたの、Bさん?」 B「あ、う…もうすぐ授業始まるから先に行かない?」 C「そうだね~行こっ、Aちゃん。」 A「無駄な時間を過ごしちゃったわ。いこいこ。」 必死に拾う彼女に後ろ髪引かれながら、教室へと急いだ。 私はトイレに行くと言い、廊下に戻った。 彼女はまだダンボールの中身を拾っている。 私は無言で手伝った。 姉「ありがとうっ!」 彼女は驚いたように目をパチクリさせた後、ひまわりのような笑顔で微笑んだ。 B「…お礼なんて言わないでよ」 お礼なんて言われる権利は私には無い。 罵られればこそすえ、こんな笑顔を向けられていいはずは無いのだ。 姉「でも、なんかしてもらったときはありがとうっていわなきゃだめなんだよー?」 それでも彼女は無邪気な笑顔を浮かべる。 その笑顔は私の心にトゲを刺す。 …違う。刺しているのは彼女じゃない、私の罪悪感だ。 B「…はい、これで終わり。私は先行くから、これ持って教室に入るのよ。」 姉「はーいっ!」 彼女は元気いっぱいに返事をして、また笑みを浮かべる。 その笑顔から逃げるように私は教室に戻った。 違う学区からこの中学に通っていた私は、同じ小学校の友達がいなかった。 だから一人になるのが嫌で、必死に今のグループにすがり付いた。 中1の時まではうまくいっていた。 派手なAや今時のCと話を合わせるのは若干疲れたが、慣れればなんとかなった。 しかし、中2になり彼女と同じクラスになってから全てが変わる。 たまたま彼女がAの鞄を汚してしまったのだ。 彼女に悪気は無かったのだが、激怒したAはおもしろがるCと一緒にちょっかいをだし始めた。 私は一人になるのが怖かった。 だからAとCを止めることは出来ず、あまつさえ一緒に彼女を…いじめた。 私は卑怯者だ 自分が一人になるのが怖くて、彼女を犠牲にしたのだ。 …あれは? 部活動が終わり、下校していると彼女が私服で川辺に座っていた。 気付くと私は声をかけていた。 B「何やってるの?」 姉「おえかきー」 彼女はスケッチブックを広げ、絵を描いていた。 スケッチブックにはものすごい精緻な夕焼けが描かれている。 B「きれい…」 私は思わずそう呟く 姉「えへへ」 彼女はうれしそうに目を細めた。 よく見ると夕日の前に男の子が描かれていた。 B「この人は…?」 姉「おとうとくんだよっ!」 B「弟?」 姉「うんっ!ここにいてほしいとおもったから。」 そう言ってとても優しい笑みを浮かべる。 私はこの間、必死に彼女を庇っていた男の子を思い出す。 B「…弟さん、お姉さん思いね。」 姉「うんっ!とっても、とーってもいいこなの!」 彼女の目が輝いた。 姉「おとうとくんはね、いっつもやさしいの。たいせつなたいせつなおとうとなんだよ!」 B「弟さんのこと、大好きなんだね」 姉「うんっ!」 姉を守ろうとする弟、弟を思いやる姉。 それは私の薄っぺらい人間関係とはくらべることが出来ないほど尊く思えた。 私はなんて浅ましい存在なんだろう… 胸の罪悪感という痛みが強くなった。 姉「…どこかいたいの?」 B「え?」 姉「くるしそう。だいじょーぶ?」 心配そうに私を見つめる。 姉「だいじょーぶ?おなかいたい?」 彼女は私を心配している? 一瞬理解に戸惑う。彼女はふと私のほうに手を伸ばした。 姉「いたいのいたいのとんでけー!」 その言葉は魔法のように心に染み渡った。 彼女はわたしのおなかに手をあてると、やさしくさすっってくれた。 私は彼女をいじめていたのに、こんなに弱くて醜い私を心配している。 …なんてやさしい子なんだろう。 姉「いたいのいたいの、とんでけーっ!」 弱虫の私を労わるように、彼女は魔法をかけ続ける。 その言葉は私に少しだけ勇気をくれたような気がした。 翌日 A「ほら、さっさとボール持ってきなよ!」 C「キャハハっ!ちょーおそ―いっ!」 今日もAとCがちょっかいを出している。 体育の時間に使うボールをからかいながら運ばせているのだ。 トイレから帰ってきた私は、少し離れた所から見たいた。 …私は卑怯者だ。一人なるのが怖くて何もしてこなかった。でも… おなかをさする。 彼女がかけてくれた魔法が全身に広がるような気ふがした。 …よし! 私は彼女に駆け寄り、ボールケースの片端を持つ。 B「一緒にに持とう?」 姉「…うんっ!」 彼女は一瞬ポカンとした後、力いっぱい頷いた。 A「何、あんた。なんのつもり?」 C「ちょーわかんないんですけどー」 B「私、この子と一緒に授業行くから先に行ったら?」 AとCは驚いたような目を浮かべていた。 私はそれを無視して先に進む。 B「いこ?」 姉「うんっ!」 彼女をいじめていた私には友達になる資格はない。 しかし、クラスにいる間は彼女のことをそっと守り続けたいと思う。 勇気をくれた魔法のお礼に。 「見えない手」 男「じゃあ最近は放課後以外来てないんですね?」 保健医「そうなのよー。それにね、私の情報によればいじめられなくなったらし いの」 男「え、本当ですかっ!?」 保健医「うん、中心的にいじめてた子達がちょっかいださなくなったみたい。」 俺は校舎裏であった三人を思い出す。 男「…どうしてっすかね?」 保健医「んー、どうやらお姉さんを庇ってくれる子がいたみたいなの。その子が庇っ てから、クラス全体がお姉さんをフォローする雰囲気になったみたいよ。」 男「そうなんですか…」 俺の代わりに姉を守ってくれる人がいたんだ… 俺は名も知らないその人物に感謝した。 男「どんな人なんすかね?その人。」 保健医「あら、お姉さんを取られた気分?」 男「違いますってっ!ただ気になって…」 保健医「私もどの子か知らないわ。でもきっと優しい子よ。」 男「俺もそう思います。」 保健医「これであなたも安心して私に性の悩み相談が出来るわね。」 男「えぇっ!?」 保健医「あら、遠慮しなくていいのよ。それともマンツーマンで保健体育の授業 する?」 男「え、えんりょしますっ!」 俺は顔を真っ赤にさせて保健室を逃げ出した。 保健医「あーん、なんで逃げるのよぉ!」 保健医の気の抜けた叫び声がむなしく廊下に響いたのだった。 「準備室の姫」 私が所属する美術部には一つの不思議な噂がある。 それは美術準備室の姫という噂だった。 美術室に飾ってある絵にまつわるものである。 週に一度ほど美術教師が準備室から持って来て張り替えるその絵は、とても精 密なタッチで誰が見てもすばらしいものだった。 最初私達は美術教師が描いていると思ったのだが、彼女は否定した。 美術教師「あれはお姫様のお絵かきだよ。」 美術教師は無愛想にそう答えるだけだった。 それ以来、私達はその絵を描いているミステリアスな誰かを美術準備室の姫と呼ぶ ようになったのだ。 実は私はその絵のタッチといつも描かれている男の子に見覚えがあった。 正確には最近見たというのが正しいだろう。 ある日、私が遅くまで美術室に残ってると絵を張り替えに美術教師が現れた。 と同時に隣の準備室から聞き慣れた声が聞こえる。 彼女だ… B「…やっぱり彼女が準備室の姫だったんですね。」 美術教師「お前、気付いてたのか。」 B「絵のタッチに見覚えがありましたから。」 美術教師「そうか。いい絵を描くだろう?」 B「ええ、ガラスのように繊細で精確なのに何故か温かい…不思議な感じです。ま るで彼女みたい。」 美術教師「お前はあいつのことよく見てるんだな。」 B「そんなことないですよ…」 美術教師「寄ってくか?」 B「…いえ、いいです。」 美術教師「なんでだ?友達なんだろう?」 B「私なんかが彼女の友達である権利はありませんから…」 美術教師「でも、向こうは友達だと思ってるみたいだぞ?」 そう言って新しい絵を飾った。 私は目を見張る。 同時に胸の奥が熱くなり、涙が零れた。 美術教師「いい絵だろ?」 そこにはいつもの男の子の代わりに、夕焼けの川辺で仲良く手を繋ぐ少女達がい た。 一人はあの子。 そしてもう一人は…私だ。 やっぱり彼女には敵わない… 私は溢れる涙を拭いながら、やさしい彼女の笑顔を思い返すのだった。 「大切なもの、なくしたくない想い」 私は一人、美術室で絵を描いていた。 動揺を隠すようにキャンバスを塗り潰す。 美術教師「…怖い絵だな。」 はっとして後ろを振り向く。 美術教師が絵を覗き込んでいた。 B「…ごめんなさい、ただ気まぐれに描いているだけですから。」 私は絵を隠すようにキャンバスに向き直る。 美術教師「あいつは好きなもの以外描かないぞ。」 B「…わかってます。でも才能がある人に上を求めるのはいけないことでしょうか?」 私は彼女の才能が埋もれるのが悔しかった。 それは彼女に対する屈折した嫉妬だったのかもしれない。 …だから、あんなことをしてしまったのだ。 美術教師「お前は勘違いしている。」 B「…何をですか?」 美術教師「お前がしたことは確かにあいつの気持ちを無視したことだ。」 私の心がズキンと痛む。 私が余計な事しなければ、彼女は傷つかなかった。 それが罪悪感と苛立ちになり、私をどうしようもない感情の袋小路に落としていった。 美術教師「しかし、あいつが怒っているかどうかはあいつが決めることだ。お前が決めていいものではない。」 B「…関係ないですよ。私はお節介なことをしただけです。彼女の信頼を裏切り、才能を売った。」 美術教師「まだわからないのか?お前は…そうやって自分を傷つけてることをあいつが望むと思うのか?馬鹿にするなっ!」 美術教師が声を荒げ、私の肩を掴む。 その顔は普段の彼女からは想像も出来ないほど怒っていた。 美術教師「今、お前を傷つけていいのはあいつだけだ。自分の殻に閉じこもってあいつから逃げるな!目を逸らすなっ!これ以上お前はあいつを裏切るのか!?」 私は何も言えない。 美術教師「少なくともあいつはお前から目を逸らそうとしていない。いや、むしろお前のことが見たくて見たくて堪らないのに、見れなくて悲しんでるんだよ…」 美術教師は私に一枚の絵を突き付ける。 美術教師「お前のために描いたそうだ。」 私のために… なんで彼女はまだ私を描いてくれるの…? 美術教師「でもよく見てみろ。この絵は未完成だ。何故だかわかるか?」 その絵には顔が描かれていなかった。 美術教師「お前がいないから、顔が描けないんだよ。あいつが最後に見たのはお前の怒った顔だから。そんな悲しい顔は描きたくないんだってさ…」 B「…う、うわ、うわぁぁぁ…」 私はその絵をかき抱く。 涙が止まらない。大きく声をあげて泣いた。 B「ひ、ぐぅ…う、うぅ、ああぁぁぁんっ!!」 私は愚かだ。自分が傷つくのが怖くて、彼女を避けた。 自分の罪に逃げ、彼女から目を逸らしたのだ。 B「う、うぅ、ご、めん、ごめんね…あ、うぅぇ…うわぁぁん!」 私は泣き続ける。 美術教師は黙って私を見つめていた。 私は浮かれていた。 彼女という気心が知れた友人を得て、毎日が楽しかった。 と同時に、彼女と彼女が描く絵に引き込まれるように惹かれていった。 B「じゃ、交換しよっか?」 姉「うんっ!」 私達は互いをモデルにして、絵を描いていた。 どうしても自分のことを描いてほしいと彼女に頼まれたからだ。 正直、彼女に自分の絵を渡すのは気が引けた。 しかし、代わりに彼女が私のことを描いてくれるというのはとても魅力的だったし、何より彼女の喜ぶ顔が見たかった。 姉「ずーっとたいせつにするね!」 B「えぇ、私も。」 彼女が描いてくれた私は本当の私よりも優しい顔をしている気がした。 家に帰り、なんとなく新聞を読んでいた。 テレビ欄を見てから他の部分を流し読みする。 ふと一つの広告が目に入った。 B「○×新聞協賛、全国中高生絵画コンクール…」 私はふと、鞄の中の絵を思い浮かべる。 彼女は進学はしない。 卒業したら趣味以外に絵描く機会はなかなか無いだろう。 …これは彼女にとってチャンスなんではないだろうか。 彼女の才能は埋もれさせるにはあまりに惜しい。 私なんかよりも才能があるあの子が評価されないのはおかしい。 彼女はもっとみんなに認められるべきなのだ。 私はクラスでの彼女の扱いが気に入らなかった。 いじめはなくなったが、まだ彼女をどこか近寄りがたく思っているものが多かったのだ。 彼女はこんなにすごくて、優しいのに。 それはきっと、彼女にたいしての屈折した羨望と劣等感によるものだったのだろう。 私なんかより才能もあり、性格もいい彼女に対する嫉妬と言ってもよかった。 保健医「聞いたわよ、お姉さん金賞取ったんですってね!」 男「なんのことです?」 保健医「だから○×新聞の絵画コンクール。お姉さんの絵が金賞とったのよ。知らなかったの?」 男「いえ、初めて聞きました…」 保健医「え、男くんが出したんじゃなかったの?」 美術教師「私が出した。」 男「先生が?」 美術教師「あいつは才能あるからな、試しに出してみたんだ。それが金賞を取ってな…」 男「でも姉ちゃんは…」 美術教師「ああ、あいつはそんなの望んでいないだろう。取材の電話が来たが断っておいた。」 男「そんな話まで来たんですか!?」 美術教師「私も浅はかなことをした。あいつの気持ちも考えず、勝手な行動をした。すまんっ」 男「あ、頭をあげてくださいっ!姉ちゃんのことが認められたのは単純にうれしいですし。取材とか、お金のために描くとかは姉ちゃんも望まないとは思いますけど…」 美術教師「とにかく、すまなかった…」 放課後、私は絵を描いていた。 気分が乗っていたのか、キャンバスに載せられた色は明るい。 彼女の才能が認められたのだ。 私は自分のことのように喜んでいた。 突然、美術室の扉が開く。 顔を向けると、美術教師に手を引かれて彼女が立っていた。 私の顔が明るくなる。 B「あ、ねえねえ聞いて!やったの、金賞よっ!!」 私は興奮してまくし立てた。 しかしいくら私がおめでとうと言っても、彼女の喜ぶ顔は見れなかった。 彼女は暗い顔で俯いたまま呟く。 姉「…あげちゃったの?」 B「え?」 姉「わたしのえ、あげちゃったの?」 B「あげたって、確かにコンクールに出したから返ってこないけど…」 姉「かえって、こない…」 B「でもね、全国コンクールで金賞なのよっ!すごいよ!これに通ればプロの画家になることだって…」 美術教師「B」 美術教師が静かに私の名前を呼ぶ。 B「なんですか?」 美術教師がそっと視線を斜め下に移す。 彼女の瞳から涙が一滴零れていた。 B「え?どう、したの…?」 私は混乱した。彼女を喜ばせようとしたのに、彼女は泣いている。 美術教師「…どうしてこんなことしたんだ?」 美術教師がふいに聞いた。 彼女は俯いて、黙っている。 B「どうしてって、こんなに素晴らしい絵を描くんだから賞に出した方がいいに決まってるじゃないですか?」 美術教師「こいつがそう望んだのか?」 B「でも」 美術教師「お前のために描いた絵をコンクールに出してくれとこいつが頼んだのかっ?」 美術教師の語気が強まる。 私はなんで自分が怒られているかわからなかった。 B「でも、この子が認められないなんておかしいですっ!現にこうやって賞を取ったじゃないですかっ!?」 美術教師「あのな…!」 姉「せんせい、やめて。」 美術教師の言葉を彼女が遮った。 姉「わたしは、だいじょうぶだから。ごめんね、Bちゃん」 そう言って悲しい笑顔を浮かべると、彼女は去っていった。 …私は彼女を傷つけた? 美術教師も無言で彼女を追いかける。 私は喜ばせようと思っただけなのに… この時、初めて私は自分が余計なことをしたことに気付いた。 彼女を傷つけてしまうなんて… やっぱり私は彼女の友人である資格がなかったんだ。 筆にのっていた黒の絵の具をキャンバスに叩きつけた。 それから私は彼女を避けた。 彼女が憎かったわけでは無い。むしろ逆だ。 私は自分がしでかした事に気付き、激しく自己嫌悪した。 そして、友達と思ってくれているのが申し訳なくなったのだ。 私にはそんな価値はない。 彼女に見てもらえる価値は。 だから私は彼女から目を背け続けた。 …それなのに、彼女は私を心配しずっと見ててくれたんだ。 美術教師「落ち着いたか?」 B「…はい。どうもすいませんでした。」 美術教師「謝るなら相手は私じゃないだろ。」 B「そうですね…」 美術教師が入れてくれたコーヒーを飲む。 それはとても苦くて、温かかった。 美術教師「あいつが絵を交換したがったのはな、もうすぐ卒業するからだよ。」 B「え?」 美術教師「あいつもわかってるんだよ。卒業したらあいつはあまりお前に会えなくなる。だから友達の証にお前が描いてくれた自分の絵が欲しかったし、自分がお前をどう見ているか描いた絵を持っていて欲しかったんだろ。」 B「だから…」 だから彼女は私が絵を手放したと知った時、あんな悲しい顔をしたのだ。 美術教師「あいつが描くお前の絵、いつも優しい顔してたろ?」 私の目からまた涙が零れる。 B「はい…」 美術教師「だったら涙を拭いてあいつの所へ行きなよ。この絵を完成させにさ。」 私は涙を拭うと勢いよく立ち上がった。 B「失礼しました。…ありがとうございました!」 美術教師「もうなくすなよ。」 私は美術室を駆け出した。 彼女に仲直りの言葉ととびきりの笑顔を届けるために。 もう絵も大切なものも無くさないように。
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原因帰属
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139 妹が病んだ原因 第六話 sage 2008/05/24(土) 02 16 33 ID ONE7CENV ―――――――――――――――――――――――――― 暗い、暗い部屋の中。 月明かりを背に一人の少女がたたずんでいる。 「あははっ♪」 少女は携帯電話を片手に誰かと会話しているようだった。 短く切り揃えられた黒髪に覆われている横顔は十六歳という年齢からは想像もつかないほど幼く、 幼女のような笑みをこぼしている。 そして、そんな愛くるしい外見に似つかわしくない、彼女が着てる真っ白な入院服と、 服に映えるようにまっ黒な、右目を覆う眼帯。 それらを纏いながら無邪気に笑う彼女は可憐であり異端であった。 「そう、そう!会えたの!会えたのね!」 電話の相手に見えるわけでもないのに彼女は喜びを体現するように狭い部屋中を、 ピョンピョン跳ね回る。 暗がりの中での片目にもかかわらず、慣れたものなのか彼女は躓くことなく部屋中を飛び回る。 「どうだった?どうだった?……うんっ!そうでしょうそうでしょう!! 言ったとおりだったでしょう!!」 部屋にポツンと置いてある簡素なベッドに飛び乗り、興奮したままギシギシと揺らす。 電話の相手は彼女の興奮ぶりがうかがえたらしく、苦笑しつつも彼女をたしなめる。 「落ち着いてなんかいられないわよ!!あなたが動いたということはもうすぐ、もうすぐなのよ!!」 そう。長かった。 あの時から十年もたった。 傷が完治し、充分に力を蓄え、いくつもの準備をするのに十年かかった。 「ええ、ええ。長かった、長かったわね。本当に、あなたがいてくれてよかったわ。 いくらあたしが優秀でも一人でできることには限界があるものね。 今回のことだってそうよ。あたしじゃあの子がいる限り近づけないもの」 決して日向に出ることは許されなかった。 彼に近づくことさえできない。 彼女がいるから。彼女のせいで。自分はずっと、十年もの間この部屋以外に存在できなかった。 彼が自分のことを見てくれないとわかっていたから、だから苦しくともここにいるしかなかった。 140 妹が病んだ原因 第六話 sage 2008/05/24(土) 02 17 07 ID ONE7CENV 「そうね、そうね。そんなのはもう終わり。もうあの子の思い通りになんかさせない。 十年前は油断したけど今度は万全。あの子の幸せを壊して、希望を潰して、存在を消し去ってやるの…」 彼女はその片目にどこまでも深い憎しみを宿し呟く。 そう。今の自分と同じように…… 「ええ?……だめよ。あの子は自分の居場所に戻るの。 身の程をわきまえずに十年も隣に居座り続けたんだから、殺さないだけマシでしょ。 もっとも、もっとも。今度こそ本当に自殺しちゃうかもね。あははっ!!」 電話の声は黙り込む。 「もう、もう。あなたはあたしの友達でしょう。あの子の心配なんかしなくていいの。 それとも何?やっぱり、やっぱりあたしよりもあの子のほうがいいの?」 電話の声はあわてて否定する。 その質問は電話の主にとっては残酷な質問。 にもかかわらず無邪気な彼女は平然と口にする。 彼女の時は彼が離れてからずっと止まったままだ。 だからこそ、子供の無邪気さは無自覚に相手を傷つける。 否定するのを聞いた彼女は満足げに頷き、 「うん、うん!あたしたちは友達だもんね!」 上機嫌にベッドから飛び降りる。 「だからね、だからね。友達だからあたしのためにあの子に殺されてくれるでしょ?」 邪気はないけど悪意はあるから。 無自覚に、無意識に、唯々自分の幸福のために。 「うん、うん。ありがとう。」 「風子」 彼女は傷つけ、壊し、滅ぼしていく。 動き出した流れは止まらずに加速する。 ―――――――――――――――――――――――――― 141 妹が病んだ原因 第六話 sage 2008/05/24(土) 02 17 33 ID ONE7CENV 「おーにーさーん!!」 俺が校門の前で麻里を待つために生ける仏像と化しながら、 本日の夕飯のメニューはシェフの気まぐれ料理がいいな、と思案にふけっていると、 聞き覚えがあるような気がしないこともない声が鬼ごっこに興じている。 アクセントが違う気がしたが字面をとらえると確実に鬼ごっこだ。 そもそも俺は一生、麻里とともに鎖国して生きていくことを誓ったのだから、 アクセントがどうとか知ったこっちゃないのだ。 麻里と会話できればモーマンタイ。 「あー。遅いなぁ」 「当たり前のごとく無視しやがりましたね」 ふむ、空気がやけにうるさいな。 「もしも~し?お兄さん?聞こえてますかぁ~」 「……」 「お~い?お~に~さ~ん~」 「……」 「まーちゃんにお兄さんにキズものにされたって泣きついてやるぅ…」 それをやると死ぬのは君だったりするんだが… 「ええい。さっきから何なんだやかましい。俺は貴様みたいな凡百の一般人何ぞにかまってやるほど暇ではないのだ。 わかったのならさっさと消えるなり消えるなり消えるなりするがいい」 「ひどっ!?ボクの扱いひど過ぎでしょ!?」 テンション高いなぁ…… つーか、この子一人称が『ボク』なのか。 やだなぁ。あの人と同じってだけでこいつのことはなんか嫌になるな。 「う~いいもんいいもん。男はお兄さんだけじゃないんだもんね。 ボクなんか引く手数多なんだから……」 勝手に落ち込みだしたぞ。 というか、あまりのシスコンぶりに男どもからひかれにひかれまくり、 挙句、相馬が妹のこと以外に興味を示したら奇跡(誇張表現)、とまで言われる俺を男扱いするのか。 頭のいとをかしな奴もいたもんだな。 そういう奴は経験上、ウチのオブジェになっちゃうルートに一直線なんだが。 ここで余計な事を言ってフラグが立つと、二、三日ぶりに行方不明事件で騒がれそうになるから自重して、 俺はとりあえず今ここに立っている原因について情報を仕入れるか。 142 妹が病んだ原因 第六話 sage 2008/05/24(土) 02 17 56 ID ONE7CENV 「あーもしもし、ふーちゃんさんや」 「ふーちゃんさんってなんですかぁ…なんですかぁ?」 わかりにくいので補足すると最初の「なんですかぁ」はちゃんとさんを混同させたことに対する不満であり、 後の「なんですかぁ」は俺の呼びかけへの回答である。 この子もなかなか難解な日本語を使うな。 「いやね、お兄さんは別に怪しいもんじゃなくてただ単に妹君はどこで何をしているのかなー、 と兄心ながらに心配しているんでね」 要約すると、テメェ麻里をどこへやった!!、ってところかね。 すると、それまでのいじけていた様子から一転、いたずっらこのように笑い出す。 「にゃふふふ♪やっぱり兄妹だねっ!お互いがお互いのことを思う、 ああ!!美しきかな兄妹愛!!」 テンションの落差が激しく喧しい娘っこという評価が確定した。 というかなんなんだ。誰も貴様の感想なんか求めてなんぞないのだ。 貴様のその目障りなツインテールを固結びで電柱にくくりつけてやるぞ。 わかったらさっさと麻里の居場所を吐くがいい!!ハハハハハハハハハ!! などという戯言は心の保管庫に留めて置くこととしよう。 「麻里の居場所がどこかとっとと吐かないとそのやかましく騒ぐ口を、 たまたま手に持っていたこの金属バット~(某ネコ型ロボット風味)で塞いでやるぞ♪」 「うわっ!!こわっ!!ってかなんで金属バットなんか持っているの!?」 「すべては麻里のために……」 「意味分かんないし、答えになってないし、そこはかとなくジリジリと金属バットを近付けないでごめんなさい言います言います言わせてくださいだから下げて下げて金属バットを下げて~!!」 うむ、聞き分けのいい後輩だな。 「あ~怖かった。目が笑ってなかったよ。あれはマジだったね。うん。 はあぁ、なんでボクがこんな目に遭っちゃうのかなぁ……」 おいおい。また落ち込んだよ。 しょうがない。今度は剣道部から借り受けた木刀で…… 「あっ!そ、そうそう!まーちゃんね、まーちゃん」 「ちっ」 「? 今、何か隠したぁ?」 「いえいえ、なにも」 以外と危機察知能力に優れた奴め。 143 妹が病んだ原因 第六話 sage 2008/05/24(土) 02 18 22 ID ONE7CENV 「そういえばさっき、お互いに、とか言ってたけど」 「そうそう、それ!ボクがお兄さんのとこへ来たのはそれだったのっ!」 木刀はその辺にポイして証拠隠滅。 剣道部に怒られるかもしれんが、そんなのはいくらでも何とかなるだろ。 それよりも今の最優先事項は麻里の情報を得ることだったりする。 授業が終わりかれこれ一時間。 いつもならとっくに帰宅し麻里とのあま~いスウィートタイム(意味の重複)に、 学校においてすり減った(主に先輩のせい)俺の精神は癒されているはずなのだが。 もしや麻里の身に何か!? おいおいおいおい、ヤベェよ、ゲキヤバだよ。 麻里の身に何かあっただって? そんなことになったらボクちゃんもうおさきがまくらのどうしようもなくあばばばあばっばばばば 「あの~おにいさん?」 「ふはははは!!人類など滅ぶがいいさ!!ハーハッハッ!!!」 「ひいっ!?」 はっ。い、いかんいかん。まことに遺憾ながら精神があっちに行ってしまった。 気がついて辺りを見回すと幸いにして人はいなかったので俺はほっと一安心。 ふー。危なかったぜ。もし誰かに見られでもしたら、 俺はともかく麻里が、あんたのお兄さんって頭おかしいんじゃない(以下略) ともかく誰にも見られなかったのだから引き続き麻里のことを待つか。 「あー。遅いなぁ」 「いきなり元に戻ったと思ったらまた無視ィ!! ヒドイ!!ヒドイよおにーさんっ!! ハッ!!も、もしかしておにーさんって巷で流行しているといわれているツンデレってやつ? やだなーもーそれならそうとちゃんと言ってよぉ。 おにーさんをめぐるボクとまーちゃんの三角関係、にゃふふふ♪たっのしそぉー♪」 144 妹が病んだ原因 第六話 sage 2008/05/24(土) 02 18 48 ID ONE7CENV それならそれで麻里が容赦なく日本刀を振り回してきそうだよなぁ。 でも、麻里が望むならそっちの昼ドラ路線も考えておくか。 この泥棒ネコっ!!、みたいなね。 そんな麻里も萌えー とはいえ今のはさすがに俺のほうがおかしかったので一応会話を元に戻すか。 「俺は好きなやつ(=麻里)にはダダ甘だから君に対してのは、 好意の裏返しではなく単純な意地悪だ」 勘違いすんじゃねぇこのメス豚、は麻里のために取っておこうかな。 「やだなぁ。冗談に決まっているじゃないですかぁ。 まーちゃんとは親友ですよ。し・ん・ゆ・う。 親友のお兄さんを奪い取ろうなんてこれっぽち思っちゃいないよぉ」 とか言ってにゃふふふと笑う。 なんかこれ以上こいつに付き合っているのは面倒になってきたな。 会話が戻るどころか、完全に脱線して道路にでも突っ込みそうな勢いになってきたし、 そろそろいい加減情報を聞き出すか。 「で、その親友さんはどこにいるんだ?」 「あっ、そうそう、そうだった! そもそもボクはこんなとこにわざわざ世間話をしに来たわけじゃないんだよ。 伝言があったんだよねぇ、伝言」 「伝言?」 「えーっと。コホン。少し用事があるので兄さんは先に帰っててね、夕飯までには戻るから。 とまーちゃんから言伝を頼まれたボクでしたぁ」 145 妹が病んだ原因 第六話 sage 2008/05/24(土) 02 19 16 ID ONE7CENV なんだ遅くなるのか、だったらさっさと帰って麻里のために御馳走でも作っておけば、って俺料理できないけど。 あいにく家事はからっきしダメなんだよなぁ。 じゃあ、しょうがない。麻里のために心をこめて買い物だけでもしようか、と結論し歩き出す。 歩き出し、 歩いて、 歩いているんだけども、 「何で君がついてきているわけ?」 「へぇ?」 なぜだか知らないが俺の隣をついて歩いてくるふーちゃん。 俺の隣は麻里の特等席だから今すぐにでも消え去って欲しいのだが。 「やだなぁ。ボクは帰るなんて一言も言ってないじゃん。 ちょっとお、お兄さんとゆっくりお話してみたかったんだよねぇ。 だからぁ、一緒に帰ろう?」 別に帰ってもかまわないのだが、帰っているところを麻里に見られて死亡エンド(この子が)になるかもしれないしな。 まあ、それでもいいか。 「別に一緒に帰ってもかまわないが、俺のことは『先輩』と呼べ」 「はぁ……」 これでこの子は後輩キャラでツインテなボクっ子という高ステータスを手に入れたわけだ。 というか俺のことを兄というカテゴリに属する呼称で読んでいいのは麻里だけなのだ。 そんなことは口が裂けたら言えないが。 そんなこんなで俺の中で後輩キャラに任命されたふーさんちゃん(仮称)とともに帰路に着く。 結句、喧し姦し騒乱娘は終始、俺と麻里の蜜月について質問し続けていた。 俺も、麻里のすばらしさについて語るのはやぶさかではないので質問にきっちりと答えていた。 そんなこんなで分かれ道。 146 妹が病んだ原因 第六話 sage 2008/05/24(土) 02 19 48 ID ONE7CENV 「それじゃ」 と、右手を上げハードボイルド風に去ろうとしようとしたところを、遮られる。 「おに、じゃないや…先輩」 ん?と疑問を口に出さずにテレパシーだけで伝えることを試みるが失敗したらしい。 結果、俺は無言で次の言葉を待つこととなる。 「先輩にどうしても聞きたいことがひとつあるんだ」 どうやら今日一緒に帰ろうと言い出した本当の目的はこちららしい。 ああ、そんなことに気づかずに俺は何意気揚々と語っていたんだ、と自己嫌悪に苛まれるのは日常茶飯事なので気にしない。 くけけ。麻里のいない俺はご飯のないチャーハンのようなものなのでいつにもまして思考がブレ易くなっている。 といわけなので用件があるなら速やかによろしく。 どうやらマジな話らしくさっきまでの能天気な雰囲気は霧散し、真摯な目をしている。 紳士を自負する俺としてはきちんと正装しないとな、ってスーツ忘れちゃったよ。ははは。持ってないけど。 俺の脳がはいている戯言は聞こえていないらしく(聞こえていたら引かれているだろう)まっすぐに俺を見ている。 ホントに同一人物なのかな、とか無益な思いつき。たぶんこっちが地な。 「先輩は」 「今、幸せなの?」 おいおい何を言ってやがりますかこのおぜうさんは。 幸せ?幸せかだって?そんなの決まってんじゃん。 麻里がいて、麻里がいて、麻里がいてくれる。 そんな日常のどこに不満があるって? 不満なんかない。俺はこの地球上にいるどんな人間よりも幸せなんだ。 麻里がいるから。麻里が隣にいる限り俺は幸せなんだ。 麻里だけが、麻里だけが俺のすべてであり幸せであり絶対なんだ。 そう、そうだ。幸せなはずなんだ。なのに、なのに…… 何で俺は何も言えないんだっ!!! 147 妹が病んだ原因 第六話 sage 2008/05/24(土) 02 20 10 ID ONE7CENV いつも適当なことを吐く口は動かず、震えるような嗚咽を漏らすだけ。 簡単だ。一言、いつものようにシスコンぶりを多大にアピールしつつ、麻里の素晴らしさを称えた後、 俺はこんな妹を持って最高に幸せだ、と高らかに宣言すればいい。 それなのに俺の口は動かない。 喉元に来ている言葉を、何かが無理やり押し込んでいるような違和感を感じる。 俺の深い深い場所から這い出る何かに体が支配されつつある。 どうして、どうして。 幸せなはずだ チガウ 麻里が隣にいてくれる チガウチガウ ずっと、ずっと笑ってくれる チガウチガウチガウ だから、幸せなんだ、幸せなはずなんだっ!! チガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウ 麻里がいるから、俺は誰よりも幸せなはずなんだっ!!! 148 妹が病んだ原因 第六話 sage 2008/05/24(土) 02 20 35 ID ONE7CENV 「先輩」 混乱している俺を見ながらふーちゃんは続ける。 その顔は俯いている俺からは確認することができない。 「まーちゃんもおそらくは苦しんでいる。 それをまーちゃんはずっと解決しようとしてきた。 それが、おそらく、まーちゃんが言っている『約束』」 何を言っているかはわからない。 ただ、俺の頭が軋む音が聞こえるだけ。 「聞いてなくてもいいから聴いて。 これは先輩たちのために言うことだから。 先輩、あなたたち兄妹が幸せになるには逃げちゃダメ。 逃げないで真実と向き合うの。もう二度と忘れちゃだめ。 忘れてしまうと先輩もまーちゃんも幸せになれないから…」 なんだ。なんなんだ。こいつは、いったい、俺の、俺たちの何を知っているんだ! 忘れるな、だ、と?俺は何を、忘れている? それが、それが今俺を苦しめているのか? 麻里が幸せになれないだと?どうしてそんなことが言えるんだ? いったいなんだっていうんだ…… 「ボクが言えるのはここまで。 先輩。今感じていると思うそのこころ。 それこそが先輩が本当にまーちゃんを想っている証。 それを忘れないで。お願い。 ボクじゃ、『友達』のボクじゃだれも救えないから……」 なんなんだよっ!! 俺たちは何なんだよっ!! 麻里。麻里ぃっ!!苦しんでいるのか?幸せじゃないのか? お前は何を思っているんだ?何を抱えているんだ? 俺は何を忘れているんだ? わからないわからないわからない 「俺はっ……俺はっ!!!」 幸せじゃなかったのかっ!!! 149 妹が病んだ原因 第六話 sage 2008/05/24(土) 02 21 12 ID ONE7CENV ―――――――――――――――――――――――――― うずくまっていたお兄さんを置いて、帰り道を歩く。 「ちょっと、いきなりすぎたかな……」 いずれ言うべきことだったとしても少し時期が早すぎたんじゃないだろうか。 でも、まーちゃんの監視の目をくぐってお兄さんと接触するチャンスなんかおそらくもうなかったように思う。 今日まーちゃんが来れないのは、おそらく姉さんのおかげだろう。 あの人のことだからこういった手助けはおそらくもう期待しないほうがいいだろう。 多分、今日のが姉さんからの最初で最後の贈り物。 「姉さん……」 幼いころからずっと憧れていた姉さん。 でも、絶対に届かない。あの人の視界に入ることさえできないと知っていた私はずっとあきらめていた。 姉さんに認めてもらいたかった。姉さんに見てもらいたかった。 姉さんに近づきたくて、一人称を姉さんとおなじ『ぼく』にして。 でも、あの人はボクに、いや、世界に興味がなくて。 「ああ……だからボクは……」 あの兄妹が羨ましかったのかもしれない。 お互いがお互いをどこまでも欲し求め合う。 そんな関係に。 「だからこそハッピーエンドじゃなきゃいけないんだ」 そう。彼らの物語はハッピーエンドにしなくてはいけない。 彼女も、まーちゃんも、お兄さんも。決して失わず、決して死なない。 笑いあって、手を取り合っている、そんな最高なハッピーエンド。 彼女の思い通りにさせない。 まーちゃんの思い通りにさせない。 そのためにはお兄さんがすべてを知る必要がある。 種は植えてきた。 でも、その種が芽吹くにはもう少し時間がいる。 それまで二人がなにもしないとは思えない。 最悪、ボクは何もできず、何も残せずに彼女のシナリオ通りにまーちゃんに殺され、 そしてすべてが彼女の思い通りになってしまうかもしれない。 そうなると、ボクのしていることは無駄になる。 「そうならないように頑張らないとねっ!!」 姉さん。 ボクの親友たちが幸せになれるかどうか見ててね。 ボクは頑張るから。 「にゃふふふ♪そうと決まったら行動あるのみだねっ!」 自分を奮い立たせて夜の道を行く。 自分ではなく他人のためにすべてを懸けて…… ――――――――――――――――――――――――――
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①そうしがテルに言ったこと 細かく書くと俺の意見になってしまい、偏ってしまうため結論だけ書きます。 「ノブカズ達が俺を蔑ろにするなら仲間に会いにというよりもテニスだけのために参加する。 だからGSを利用させてもらう。テニスしたいときだけ行く」とテルに言いました。 テルはそのことをノブカズ達に相談?報告?とりあえず話した。 それを聞いたノブカズはコート取ってる身としては腹立つ!と激怒した。 ②のぶかずとソウシの電話 その件について、ノブカズとソウシは電話した。 30~40分ほど話した。 電話の中でお互いの発言に対しては謝った。※ノブカズは聡志は誤ってない。と主張してるけど。 でも、最終的に申し訳ないけど俺の意見はまだ変わらない。でもそうなるようになれたらいいな。で終話。 ※1回電話したくらいで変わるようなら、そもそもこうはなっていません テルに電話したけど、俺の意思は変わらなかったよと報告。 テルはそのことをノブカズに報告。 ノブカズはガガ、モトヒデ、セージ達に報告。 ③その後、ソウシ→ノブカズへ宛てたメール どうも 聡志です。 遅くにメールごめん モモやテル君からのぶちゃんが不快な思いしてるって聞きました。 それはGSを適当にテニスする場所として利用するってのを聞いたからやと思う。ごめんなさい のぶちゃんと一回電話したくらいで気持ちが変わらなかったのは事実。 その後も数日、気持ち変わらなかった。 でもクニちゃんと話して変わってきて、今ではGSに前のように戻りたいって思ってるねん、本当に。 おれはGS戻る気でいるし、テニス参加するつもり。 でものぶちゃんと和解しないままっていうのは嫌 だから何時でもいいから、話し合えるとおもった時に連絡ください。 ④ノブカズ→そうしへの返信 それだけやないで。テルさんやもとひでから色々聞いて正直、どこまでワガママやねんって思ってる。 自分の思い通りにならないことをすべて人のせいにして自分は何一つわるくないって思ってたこと、あれもこれも、出してごちゃごちゃ、ごたくならべられるのもうんざりやわ。俺だって納得いかへんかったこと色々あったけど、悪いと思ったことは素直にあやまった…。 こんなこと言ってもどーせ伝わらへんやろーけどな。どーぞいつものように、流してくたさい。 人の気持ちなんて簡単には変わらへん。俺は信用してない。身近なテルさんを含め、もとひでやカズくんとか周りの優しい人達がどれだけそうしの為に話してくれたの? 裏では「俺は悪くない。悪いのは◯◯や」の一点張り。がんこ。自己中。 納得してないのに上っ面であやまられても無理。信用できない。利用されるだけ。それはプライド高いそうしが一番わかってるでしょ?また同じこと、繰り返すだけや。 被害者きどるのも大概にしろって感じ。そんなに自分のことばっかり気にかけてほしいなら他所でやって。オーパスつくれば? 悪いけど俺、そんな人のために自分の時間さいて毎回、住之江のコート確保してること、素直に謝ったことを思うと腹が立つわ。 俺だけやない。他の人もそう思ってるで。何人もね。よく口癖のように「俺はなにも悪くない」って言うけどGSの全員に聞いてみたら?その中にはのぶちゃん連合やない人達だってたくさん居る。さてどんな答えが返ってくるやろーね?100%そうしが正しいかどうかはそうしが決めることやないで。周りが決めること。 「だからあやまってるやん」とか今更無しね。あー言えばこー言うのも、もう勘弁。 っていうかGSレベル低いし、あなたはどこでもテニスできるんでしょ?業務的にするなら他所でやれば?「人との繋がり」って何? 後先考えずに、周りの人巻きこんどいて今までの態度は何やねん。自分が言った言葉やとった態度に責任もてないなら初めからそんなことしないでほしい。 無神経も大概にしろよ。 これが今の俺の気持ち。 でも、来週からGSに来てな…。 合宿の一週間前くらいにガガとモモとテルとソウシは電話しました。 3人と話して、「クニちゃんが相談にのってくれて、だいぶ俺の思いは変わってきた。 だから解決しようと思ってる。」それに対して3人は友好的で解決しよう。けど今はノブカズに言わない方がいい。 その代わりテルとモトヒデからノブカズにその旨を伝えてみるわ。とのことで終わりました。 そのあとどうなったかは分かりません。 そして数ヶ月たち、"11月19日"へ続きます。 TOPへ 原因1へ 原因2へ 11月19日以降